第二十一話

そんなこんなで、文化祭前日を迎えた。

長曾我部君の指示がてきぱきとしてるのか、クラスが一丸となってやっているのか、準備はスムーズに進んでいた。
きっと双方のおかげだと思う。


衣装を作ったのは先輩と猿飛君ですごく凝っているうえにクオリティが高い。
たぶん、売れるよ?
女子のはすごく可愛い上に、ひとつひとつデザインが違う。
男子のも同様で、デザイン性が高く個性溢れたメンバーのためかデザインがひとりひとり違っている。

・・・どうやって、考えたんだろデザイン。
そう思うほど、もうプロっていたのは確かだった。

前日なので、店構えも立派に整えられ、教室はひとつの喫茶店のようになっていた。
今は、もう教室にいるのは私だけで文化祭実行委員以外のの生徒はもう帰った。
実行委員の人たちは今最終確認の為に集められている。
私はというと、それの報告を待ってる。


「はー、懐かしいな・・・」

教室に重ねた私の思い出。
あの時も確か、喫茶店をやって。

今回みたいにクオリティが高いわけじゃなかったけど、すごく・・・楽しかった。
今回も楽しめたらいいよね。

そんなことを考えてたら、長曾我部君が教室に入ってきた。

「おう、待たせたな!
 これで報告は最後になるんだな・・・」
「そうだね、何か文化祭準備も短かったような気がするよ」

思えば副担任に実行委員が報告、それがずっとあった訳だけどそれも今日で終わる。
最後の報告もすぐに終わり、長曾我部君は鞄を持って帰ろうとする。

「じゃあお疲れ様、今日は一人で帰るの?」
「おう、今日は。いっつもだったら、政宗とか残ってるが前日は部活無しだもんなー」
「うん、・・・あれ、彼女と一緒に帰ってると思ってたよ、私」
「一緒に帰ってことはねぇな」
「そ、そっか」

何か、意外だった。
教室以外では結構一緒にいるところを見かける。
だから、ずっと一緒にいるもんだと思ってたんだけど。

「ごめんね、引き留めて。じゃあ」
「先生、髪に何か付いてるぞ?」
「へ?」

とっさに反射的にとろうとするが、何処かわからなくてあたふたしてしまった。
そんな私を長曾我部君は笑い、わざわざ取るためにドアから引き返してくれた。

「・・・ほら」
「ごめんね・・・」
「気にすんなって!」

気付けば、驚くほどに近い距離になっていた。
その距離にいろいろ思い出してしまって、顔が熱くなってしまった。
その顔を見られたくなくてとっさに下を向いて目を逸らした。

「どうした?」
「い、いや・・・何でもないから。気にしないで。
 ごめんね、ありがと。
 ・・・・・・−っん!?」

距離を取ろうとして後ろに下がった途端、顎を取られて唇を奪われた。
抵抗しても腕を掴まれるため、思うように動けずされるがままだった。

長曾我部君に唇を奪われたのは何かとこれで3回目だ。
初めても、2回目も記憶はないけどきっとそれは今の長曾我部君も一緒なんだろうね?

彼女がいるくせに、どうして、っ?


「やめてっ!」

やっとの思いで、腕を振り切れた私は思いっきり長曾我部君を突き飛ばした。

「彼女がいるのにどうしてそんなことするの・・・?」

声が震えてるのは確かだと思う。
でも、黙ってはいられない。

「お願いだから、やめてね?」

「悪ぃ・・・自分でもどうしてしたくなったのかもわからねぇんだ。
 だが、どうしてもしたくて・・・。
 悪かった、先生。泣かないでくれ」

長曾我部君は私をぎゅっと抱きしめた。
それをもし誰かに見られたら大変なことだってわかってる。
ただ、温かくて一瞬私の心は負けた。

すぐに涙を拭って、何とか教師らしく振舞う。

「・・・ありがと、私ちょっとどうかしてた。
 もう大丈夫だから、もういいよ。
 気を付けて帰ってね」
「お、おう・・・悪かった、じゃあな」


もう一度教室を出た長曾我部君に向けて作った笑顔・・・。
うまく笑えていたのかもわからないよ。

せっかく、長曾我部君に彼女できたって聞いてチカちゃんも成長したんだと喜んでたのに、それはつもりになってただけなんだ。


どうしよう、私はもしかしたら好きなのかもしれない。
チカちゃんの時から、きっと男の子だってわかってたら好きだったかもしれない。

でも、今好きなのは事実かもしれなくて。
・・・・・・んなこと、あったら駄目か。

あきらめないと。












  


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