第一話

「忘れないでね、絶対…絶対にっ」
君は泣きながらそう言った。
必死に笑顔を作った私の手を掴んで。

「また会えるからね…チカちゃん」
泣きそうな私は気持ちをぐっと堪えてそう言った。



ジリリリリリリリ
頭に鳴り響くような目覚ましの音に私は目を覚ました。
カーテンを開けると部屋の中に日光が入ってきて眩しいと思いながらも遠くを見つめる。

ー今から10年以上前の夢を見た。
10年前、私は大好きなことお別れをした。
家が隣で親同士も仲が良くよく一緒に遊んだりもした。

でも、そんな日が長く続くことは無く、その子の家は遠くへ引っ越してしまった。
その子を私はチカちゃんと呼んでいた。いつも私を本当の姉のように慕ってくれていたかわいい女の子だった。

チカちゃんとは4歳違いだったけど私は昔から精神年齢が低くほとんど対等に遊んでいたことを覚えている。…4歳違いということは今はもう17歳の高校2年生。

実はチカちゃんは高校になってからこちらに戻ってきたらしい。でも、私が大学に入ってこの地を離れたために会うことはできなかった。
私は高校教師となってこの地に戻ってきたが元の家に戻ることは叶わず一人暮らしをしている今まだチカちゃんには会えていない。家に戻ることができなかったというのは親がいまこちらにいないからだ。
いい年をしているというのにうちの親はまだまだ元気に働いている。それが買われてどこかの支店を任されたらしい。だから、私は今一人暮らしというわけだ。


そして今日4月7日、やっとこの日を迎えた。
教師として初めて生徒に会う日がやってきた。
母校である高校に戻って始めての登校というわけではないが、春休み中とは訳が違う。春休み中、もちろん生徒は数名はいた。しかし、今日は数人どころじゃない。後輩がうじゃうじゃいる。そりゃ、テンションの上がり方は違う。
”変な奴ばっかの高校だ(笑)”
昔から学校はそう言われていた、いい意味でも悪い意味でも。
そんな学校の卒業生でもあるからきっと私も人とは少し違うところもあるんじゃないかとは一応思っている。テンションの上がり方が激しかったりもするからなぁ…。

いい意味で言えば生徒が個性的であり自由な校風ということだ。そのため、行事にいたっては他の学校とは比べ物にならないほど熱の入り方も違うし、テンションも違う。
時折、本当に不思議になるくらいだ。
だから、今日この日をすごく楽しみにしていた。
どんな子がいるんだろう…と。
チカちゃんもいたりしてなんてそんな淡い期待も寄せながら私は家を出た。


学校に着き始業式の挨拶も無事終わり、とうとう生徒たちと本格的に対面することになった。私は2年2組の副担任で担任は片倉小十郎さんという先生。私が高校のときの剣道部のの先輩でもあった。
教室の前まで来るともうがやがやと騒いでるのがわかった。あー、なんか緊張しちゃうよ。
「おい、名前いや…もう斎藤ってよばねぇと駄目か。そんな緊張すんじゃねぇ。
 お前が知ってるとおり此処は面白い奴ばっかりだからな」
小十郎先輩はそうそう言って私を励ましてくれた。
はーい、と単純な返事しか返せなかった私に先輩は苦笑しながらもドアを開けた。開けたとたんにこちらに視線が集まった。

「ほら、席に着け。
 お前ら知っている通り、担任は俺、片倉小十郎だ。
 副担任は…ほら斎藤」
視線を促して私に挨拶をするように言う。
「私斎藤名前っていいます。一年間よろしくお願いします!
 まだ学校の事わかんないとことかあるから教えてくださいー」
まぁ言っちゃえばありふれた挨拶だけど基本いい子が多いらしく拍手され、「若ーい」だの「おお、女教師じゃねぇかよー」だのそんな声が聞こえてきた。

「じゃぁ、今からホームルームになるがー」
そうやって次に進めていこうとした矢先、
「おい、小十郎…teacherへの質問timeでも設けろよ」
まさかの先輩にタメ口聞いて言葉を遮る生徒がいた。…え、えーと伊達政宗君だっけ?
すると先輩はわざわざ伊達君のところまで行って何かとこそこそ呟いていた。何言ったのかはわからないけれど、先輩が教卓へ戻ってくる頃には伊達君の顔は真っ青になっていた。…何言ってたんだろうね?

「で、するか?」
その一言ですることになったようだけど…先輩、私は転校生か何かですか…。
「先生ー、出身地は?」だの「趣味は?」だのそんなありきたりな質問攻めに遭い、一つ一つの質問に答えていった。
中には3サイズや好きなタイプとか聞いてどうするんだ…っていう感じの質問があって最近の子は大人なんだなっていうのを感じた。
もちろん、3サイズなんか答えてないけどさ。っていうか、誰が暴露するかっ!

まぁそんなこんなでホームルームも終わり、一日はあっという間に過ぎていった。



    


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