第十七話

あいつは副担任の先生・・・。
そんでもって、剣道部の顧問で。


でも、あいつは俺のことを”チカちゃん”と呼んだ。
寝てる時でさえ、考えててくれてたってことだよな?

まず、学校の先生が一人の生徒のために何で病院で泊まる?
お袋が頼んだわけでもねぇ、純粋に考えりゃいい先生ってことになるんだが・・・。


政宗とかの反応を見ていたらただの先生って訳でもなさそうだ。
政宗なんかは最後キレ気味だった。
普段は冷静なくせして、なんかでっかいことには自分を抑えられねぇ奴だ。
一人の女のためにああやって怒鳴るところなんて初めて見た。


・・・きっとそれだけ俺は大事な奴を、記憶から消したってことだよな?

政宗に聞こうとも今の俺には言っても仕方ない、とか言って教えてくれることもねぇし。
他の奴等も一緒だ。
野郎共も知る訳がねぇ。


退院して、また学校へ行く訳だが一向に思い出す気配はない。
部活手伝いに行ってる意味もぶっちゃけわからねぇ。
でも、皆で騒ぐのが楽しくて言ってる訳だ。


俺は、何を忘れてんだ。

あの人にとっての俺は、俺にとってのあの人は・・・一体何なんだ?




夏休みもあっという間に終わり、とうとう学校も始まった。
何もねぇまま、時間だけが流れていく。


だが、俺の中には少しだが、変化はあった。

いつしか、無意識のうちにあの人を追いかけている自分がいた。
相変わらず、病院の時と態度は変わらねぇ。
すっげぇ優しいし、笑顔が可愛いし・・・。

でも、時折切なそうな顔をする時がある。
そんな時は抱きしめてやりてぇ、とか思っちまうわけだ。


何にも思いだせねぇ自分にイライラが止まらねぇ。

きっと俺は記憶の無いまま、あの人を好きになろうとしてるんだろう・・・。
普段の俺だったら、どうしてるかわかんねぇが。

ここまで、人を恋しく思ったことはなかったんじゃねぇかな?
強いてあると言えば、俺がまだ小さかった時の話だ。

いっつも、遊んでくれる女の子で。
憧れてて、でも離れ離れになってからそれは恋に変わったと思う。
・・・今思えば、あれが初恋だった訳か。なんか、気持ちを思い出すと初々しかったと思える。

あいつ、今頃どうしてんのかな・・・。

それから、別に女に関わらなかった事は無いが恋に落ちることなんて無かった。
女と言えば、ただ欲の捌け口としか思えてなかった。
最近まで本当にそうだった。


でも、最近俺は女と出かけることなんて一切なかった。
その理由がわからねぇ。

記憶を失う前の俺は何で我慢できたのかもわからない。
・・・ほんと何でだろうな?


ああ!
あの人思い出すたびになんかもやもやして、イライラする。

自分自信を思いっきり殴りてぇぐれぇだ。




その夜、俺は欲の捌け口を求めて家を出た。









  


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