第十五話

なんだか、頭がくらくらする。
だるい体を動かしてなんとか、俺は起き上がった。

まだ、薄暗い・・・。

携帯の時計を見ると、朝4:30だと。

あれ、此処何処だ?
病院みてぇな・・・、俺事故っちゃったんだっけ?
それで、此処は病院か。

自分でも結構冷静な判断してるもんだと苦笑する。
あー、それにしてもだるい感じが拭えねぇ・・・。


『チカちゃん・・・』


不意に女の声が聞こえた。
え?
病院だからか?
でも、もう朝方だぞ・・・、そう思って横を見たらひとりの女が椅子に座って寝ていた。


誰だ?
お袋でもねぇ、でもチカちゃんって呼んだぞ?

知ってる奴なのか?

まあ、いい。
すぐにわかることだろ。

まだ、薄暗い空に眠気を誘われ俺はもう一度寝た。





「ぅん?あれ・・・?」

次目を覚ました時、目の前には政宗の姿があった。

「やっと、目を覚ましたのかよ・・・心配掛けやがって」
「おう、すまねえな」

見渡してみれば、幸村も佐助も、あと片倉先生もいた。

「ほら、アンタも何かいってやんな」

政宗がそう言って背を押した女。
昨日、俺をチカちゃん、と言った女だ。

「えっと、・・・大丈夫?」
「お、おう。すっかり、この調子なわけだが・・・
 悪ぃ、誰だ?政宗の女か・・・?」

『っ!?』

俺の反応にこの場にいた全員が驚いている。
あれ、俺変なこと言ったのか?

普通にこの人知らねぇぞ?

「鬼の旦那〜、もしかして本気で言ってるの?」
「ああ、俺が記憶喪失とか言いたいのか、お前らは・・・」

「元親殿・・・はっきり言うでござる、貴殿・・・
 −記憶喪失でござる・・・」

は?
俺が?

一番冷静になってる片倉先生の方を見るが、やれやれといった感じで呆れてる。

「でも、お前らのこと覚えてるぞ?」
「記憶の一部が欠けたんだろうな」

「Realy!?
 元親よく見ろ!」

政宗はそう言って女を前に出して、俺の顔の前に出すが・・・

「わかんねぇ・・・。
 っていうか、恥ずかしいことしてんじゃねぇよ!」

知らねえんだが、なんか無性に恥ずかしかった。

「体は反応してるのに、わからないなんて・・・あーあ、可哀想な鬼の旦那・・・」

珍しく、佐助がひどく同情しているが、俺は大変な奴を忘れちまったてことか?

「で、ぶっちゃけてもらいてぇんだが、誰なんだ?」
「ちなみにお前自身は誰だとは思うんだ?」

片倉先生が興味本位でそう聞いてくるが、知らねぇもんなぁ。
でも、周りがこうひどく驚くってことは俺はかなり大変なことをしでかしちまった、っていうか・・・忘れちまってんだよなぁ?

「お前らの反応からいくと、俺に近かった奴なのか?」
「・・・ま、一方的だけどな。主にアンタの?」

まず、ここに集まってんのは剣道部の奴等だし。
片倉先生もいる・・・ってことは、

「剣道部の先生か、なんかか?」

「おお!正解でござるっ」

お、当たったらしいぞ。

「でも、それだけじゃあないんだよね〜?」

ん?
それ以上の関係ってことか?

「だぁ!もういい、イライラしてきたっ、俺は言う」
「ちょっと、竜の旦那?」
「honeyはなっ!」

honey、って言ったな。
政宗の彼女か、そりゃ忘れたら怒られるもんなのか?

「アンタのー」
「副担任だよ!」

しばらく黙ってたわけだが、本人が自分から言った。

「おいっ!アンタそれでいいのかよ!?
 昨日どれだけひどい状態だったってー」
「伊達君・・・もういいから。
 長曾我部君、改めまして・・・私斎藤名前。副担任で剣道部の顧問してるの。
 夏休みは長曾我部君に手伝ってもらったんだけど、覚えてないかな?」
「夏休みー・・・それは覚えてるが。
 悪ぃな、俺んとこにお前さんがぽっかりな・・・」
「ううん、いいの。
 じゃあ私は先に帰ります、お大事に、っ」

そうって斎藤先生は笑顔を俺に向けて帰った。
最後に見た顔は泣いてた・・・?
それは、事実か俺の見間違いだったのかはわからない。

ただ、笑顔がすごく痛々しかった。


「小十郎、俺あいつ送ってくるから元親にリンゴでも剥いてやれよ」
「かしこまりました」

政宗は部屋を飛び出し、片倉先生はリンゴを剥き始める。

なんだ、この俺だけ置いていき濠な感じは・・・?

「まぁまぁ、気にしたって記憶は戻らないわけだからさっ、もっと気楽になりなよー」
「そうでござるよ」

佐助と幸村はそう気を使ってくれるが、どうもな・・・。

俺の記憶どうしちまったんだ。
あいつのことを思い出そうとしても、なんだかもやもやするしな。


俺どうなっちまうんだろ。





  


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