第十二話

私たちが伊達君と猿飛君に当たってしまってから、時間が少し流れた。
あれから、練習が終わって、皆でご飯を食べて、お風呂に入って・・・


ついに恐怖政治の時間がやってきた。


集まったのは宴会場。
すでに何人かの生徒たちが集まっている。
その中にはもう王様である二人がいる。

「はぁー」

思わず溜息が出てしまう。
でも、なんだか楽しみになった来そうな自分もいる。

なんせ、王様ゲーム。
王様が楽しければ、見てる側も楽しい。

私は見てる側だったら結構好きだ。
だから、ただ番号が当たらいことを祈ってる。



後ろの方の席で生徒たちの様子をしばらく見ていて少し経った頃。
私の隣に先輩が来た。

「まさかああいう風に来るとはな・・・
 俺も正直驚いた」
「先輩もですか?
 でも、負けたことは負けたんですから。私は民になっちゃいましたね。
 まぁでも、見てる方も結構好きなんですよね」
「そうか、ま、頑張ってくれ。俺は一応、つまみ程度のものを作るから」

え、つまみて。
あなたおかあさんですか?
それとも・・・って、なんか最近ちょくちょく先輩がお父さんらしく感じてしまう。

「私も手伝いましょうか?」
「いや、一人で大丈夫だ。いざとなったとき、頼んだ」
「あ、はいっ!」

頼まれてしまったからには監督として見てれたらいいなー、とか思う私であった。


先輩が部屋を出て、しばらくして長曾我部君がやってきた。
最後だったらしい。

伊達君が声を上げた。

「おい、元親最後だぞ。いいから、さっさと座れっ!」

そして、長曾我部君は後ろで座ってた私の隣に座った。

「先生、俺・・・守れなくてごめんな?」
どうやら、さっきのこと少し気にしてたらしい。
「ううん、私こそ・・・私のせいで二人とも一気にやられちゃったみたいで、ごめんね?」
「いや、俺が悪かった・・・」
「長曾我部君のせいとかじゃないからさ。
 せっかくだから、楽しもうか?」
「ああ、そうだな」


ということで、始まった王様ゲーム。
正直始まる前、わくわくとかしてましたよ・・・。

でも、長いことやってたら私は少し涙目だった。
何しろ、猿飛君の目が良かった・・・ううん、良すぎた。


『はい、じゃあー36番が王様にほっぺチューか、肩もみで〜。
 ・・・せんせー、どっちがいい〜?』

『17番、どうしようかなー。
 王様に・・・抱きつくか、抱かれるか!・・・どうっちがいい〜?』

番号でいったくせにピンポイントで私を狙う猿飛君。
何回、どっちがいい、なんて聞かれたことか。

ちなみに、伊達君にしては長曾我部君の気持ち知ってるからか、猿飛君に番号を聞くなり・・・

『12番が9番に、・・・kissでもしてもらおうか?』
にやりと笑ってこっちをみる伊達君。
あの眼は人間なんかじゃなかったよぅ・・・。

結局その時私と長曾我部君それぞれで・・・。
私が長曾我部君の眼帯に唇を当てた。

『えー』
とかそういう声が聞こえたけどガン無視。
生徒にこれ以上手ぇ出せるか!!
こちとら新任教師なんだよ!!

時刻はすでに2時。
だんだんと練習の疲れが出たのか、寝るために何人かの生徒は部屋に戻った。
・・・正直私も眠い。


ーそして、またしばらくして時刻は3時。
とうとう、残りのメンバーは王様二人に長曾我部君、私だった。
ちなみに、眠りに行った子の中には先輩が介抱した子もいる。
どうやら、王様二人は男子たちには過酷な命令を出しまくる主義らしく・・・(意地悪いな)うなされている子もいるとか。
そのせいで、先輩が介抱してこの場にはいない。

・・・私も、眠いよ。
でも、あとの皆はぴんぴんしてる。
どこにそんな体力があるんだろう?

いくら眠くても私がここの監督を頼まれたからには部屋に戻ることもできない。

「ねぇ、この状態って長曾我部君と私ぐらいしか命令できないんじゃないの?
 いいの、面白くなくない?」
ふと、感じた素朴な疑問。

だけど、二人はきっぱりと言い放った。
『大丈夫だ、問題ない!!』

どこぞのもんを何パクってるんだ、とか思いながらもゲームは止められない。

そして、二人はこの時を待ってたかのように連続で命令しだした。

『2番が好きな人を暴露、ついでにその人に向けて告白だ』
この時の2番は長曾我部君。
・・・まさか、このパターンは・・・。

「俺は斎藤先生が好きだ・・・告白か、
 俺は一人の女としてお前さんを見てる、どうしようもねぇくらい、好きだ・・・」

うわー、言っちゃったよ・・・。
この状況が状況でも思わず顔が熱くなる。
っていうか、状況でも恥ずかしくならない人なんていないんじゃないのかな?

「ほんと、鬼の旦那は一途だね〜、じゃあ次俺様。
 もう他の生徒はいないしいいよね、2番が1番の唇にキッスで〜、あ、なんだったらディープの方でもいいけど?」
なんだったらってなんですか?!
・・・ちなみに、私が2番。

「あの、拒否権は?」
『nothingー/ないよ〜』

笑顔で私の希望を断ち切る二人。
このままじゃ私やばいんじゃ・・・

「もし、ばれたら私免許剥奪になっちゃうんだけど・・・」
「言わないから大丈夫」
そんなノリが軽いんだけど・・・

「ちなみに教師が生徒に手出したらダメってこと?」
「うん」
「なら、仕方ねぇな」
おお!今回は引き下がっー

「番号入れ替えたらいいんだろ?」

おい!

「名前・・・」
長曾我部君が私の名前を呼んだ。

「長曾我部君、そんな嫌な事だったら嫌って言わないと・・・」
「お前さんは嫌か・・・?」

嫌か、そうでないかといわれたら・・・どっちなんだろ?
別に長曾我部君が嫌いとかな訳ではない。
でも、それとこれとは話が別で。

「まず、一目でこういうのをするもんじゃないでしょ?」
うまく言えなくて私は言葉を濁した。
どう言ったらいいんだろ?

「おい、二人とも目閉じて耳塞いでろ」
王様である二人に向かって長曾我部君がそう言った。
二人は何故かそのまま素直に目を閉じて、両耳を塞いだ。


「一人の男として、俺のことをどう思う?
 教師からとかじゃなくて、女として・・・」

女として・・・?
主観的にってことだよね?

「私は個人的には長曾我部君すごく格好良いし、性格だって良いし・・・嫌いになる人なんてそういないと思うよ。
 でも、私を好きになる理由なんてほんとにわかんない。
 長曾我部君のこと普通に好きだって思うけど、そういうとこ疑っちゃうかな?」

結構正直な気持ちを言ったんだけど、長曾我部君の方は物足りないらしい。

「つまりいい人だって思ってくれてるんだろ?
 でも、いい男とは思ってないってか?」
「いや、そういうつもりでもなくて・・・」
「ちょっとこれ飲んでくれるか?」

不意に差し出されたコップ。
中身は透明で・・・水?

「ごめん」

飲んだ瞬間に聞こえたこの言葉。

飲めば広がる、喉がきゅーとした感覚。

・・・日本酒?


そう思った瞬間に私の方に重みがかかった。
目の前には長曾我部君の顔。

何?

体中が熱くなってくる・・・。
うまくこの座ってる状態も維持できないー

そう思った時だった、意識が戻った。



「あれ?」
「先生、戻ったか?」
「日本酒飲ませたの?」
「ちょっとだけな・・・」

どこから用意したんだろうとちょっと思うけど、

「何かした?」

『え?』

何がどうなってるかもわからず、困惑してる二人。
ちなみに私も何がどうなってるかわかんない。

「二人ともどうかした?」
「え、アンタ覚えてねぇのか?」
「へ?」
「今、鬼の旦那が先生にー」

「ちょっと水飲ませただけだ!」

水を飲ませたと言い張る長曾我部君に、困惑してる二人。

「水を飲んだだけなら大丈夫じゃないの?」
「ま、俺らはいいが」

「おいおい、まだ続けるのか?」
「もう俺様何が何だかわからなくてもういいかなーって思ったりしてるよ」

ということで、午前4時。
とうとう恐怖政治は終わった。

私もよく耐えたものだと思う。
体力もう限界だけどね・・・。



こうして、合宿6日目も幕を閉じた。







  


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