第十一話

合宿6日目。
練習日はこれで終わり。

私たち三人は誰からも当てられることなく、生き残っていた。
いや、何も生き残るもないんだけどね。

3回のチャンスを使ってしまった生徒は多く、
先輩によるとあと残ってるのは伊達君、真田君、猿飛君あたりなのだとか・・・。

「また、めんどー、・・・強そうな人たちがまだ残ってるんですね」
「ああ、本当に面倒くさい奴らがなぁ・・・」
あらら、主?、である伊達君も面倒くさい一員に入ってるよ。


「だが、あと奴らは一発づつだ。
 ここまでだと一人では何もできないはずだ。
 もしかしたら、政宗様と猿飛が組むかもしれねぇから気をつけろ」

・・・あの二人はほんとに、もう。
ここまできたらなんだか呆れてしまうんだけどね?
とりあえず、頑張ったらいいってことだよね。

っていうか、私が王様ゲームに入っても男子ばっかりで私が何かをさせられる可能性も少ない気がするけど・・・。

ふと、考え事をしているときだった。
後ろに気配を感じた。

ざわっ、と少し後ろの草むらが揺れた気がした。
多分、この暑苦しい気配を隠しきれていないのは真田君だろうね?
おそらく、私がこのまま一歩でも向きを変えたなら竹刀が飛んでくるだろう。
このまま反対を向けばきっと・・・。


ここで、立ち止まってても仕方がないので私は反対を向いた。
その瞬間に草むらが大きく揺れた。

とっさに竹刀を構えて後ろを振り返って見てみれば真田君が大きく飛んでいる。
そして、ひどく驚いている。

ま、それはそうかな?
仕方ない。

「ごめんね」

私はそう言い残して、向かってくる竹刀を弾いた。

「くっ!」
バランスを崩したまま真田君が地面に落ちてゆく。
このままだと、危ないと思った私はすぐさま受け止めようと真田君の手を手前に引っ張った。

案の定、私のほうへ落ちて私はその時に足が付けず、転んだ。

「いたっ!」
「せ、先生!!大丈夫でござるか!?」
「だ、大丈夫だよ?真田君の方こそ大丈夫?」
「そ、某は大丈夫でござるが・・・」

心配そうに私の顔を見つめてくる真田君。
いつもならこういう状況なら、破廉恥でござらぁぁあ、とか叫びそうなのに。
なんだか、一人で笑ってしまいそうになる。


大丈夫だからね、そう言って立ち上がった瞬間足首に痛みが走った。
裾をちらっとあげてみると、腫れてた。
・・・どうしよ、このままで組んだりできるのかな?
そんな心配が心に積もった。

「本当に大丈夫でござるか・・・?」
「うん!
 ・・・でもね、真田君。
 私個人的には敵の背後を狙うなんて真田君らしくないんじゃないかな?」
「ぅっ!」

真田君は痛いところを突かれたのか、申し訳なさそうな顔をしてる。

「某が間違っておりました・・・某は、某は、卑怯な手をぉぉぉー
 うおぉーー、殴ってくだされ、お館さぶわぁぁぁぁ!」

叫びだす真田君、困ってしまう私。
ど、どうしよ・・・結構気にしてるっぽいよ?

んー、仕方ない。
私がなんとかしないと。

真田君に歩み寄って頭を撫でた。
「大丈夫、こういうのは戦略っていうんだよ、ね?」

しばらく撫でてたら、真田君も落ち着いてきたみたいでしゅんとした。
「先生、すまんでござる・・・」
「もういいよ、そろそろ戻ろ?」

真田君は珍しく黙ったまま、私の後を付いて道場へ戻った。



道場へ帰るなり、伊達君と猿飛君を見た。
二人はひたすら組んで、練習をしているみたい。

残るはあと二人・・・−。
当てられなければいいんだけど。

その時だった、二人は休憩に入ったかと思うと、一目散に長曾我部君のほうへ走り寄った。
まずい、このままだったらー

”長曾我部君があてられるっ”
そう思って私も走り寄ったら、猿飛君が大きく宙を舞って私の後ろに入った。

トン、と私の肩に竹刀が置かれた。
「あ・・・」

当たっちゃった・・・。

「やったー、俺様当てちゃったよ。悪いね〜」
「そうか、ま俺も元親を当てたからな・・・」
え、長曾我部君一対一になったのに当たっちゃったの?

「なんか先生の方に俺様が行ったのを見て竜の旦那に背を見せちゃったみたいだね〜」

え、私のせいで?

後ろでは先輩が溜息をついた。

「伊達政宗、猿飛佐助・・・お前らに今夜の王様の権やる」

あー、負けちゃった。

皆ぽかーんとしてるし。
私はただただ今夜の王様ゲームで番号が当たらないことを祈るばかりであった。











  


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