進むeighteen
高知へ来て4年目。
とうとうラストJKである18歳を迎えた。
そうは言っても自覚はほとんどないし、自覚するのはだいたい勉強する時ぐらいだった。
自分は受験生だ、と。
そして、だから元親さんにはなかなか会えないのだ、とそこまで考えてからやっと自覚する生活をしていた。
でも家は有難いことに隣なので、窓から窓へ飛んでみたりすることもたまにはある。
今日は誕生日。
家でもなんとなく祝ってもらって、元親さんもわざわざ家までお祝いにと髪飾りをプレゼントしてくれたけれど気を遣ってか、すぐに帰ってしまった。
15歳からは今までずっと元親さんが誕生日を一緒に過ごしてきてくれてたから今年はこう・・・凄く寂しい。
どうにも勉強に身も入らなかった私は結局窓を飛び越えた。
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「ったく、今日ぐらいは正面から入ってきてもいいだろうに」
いざ飛んできてみると呆れたように笑う元親さん。
誕生日ぐらい会いに行っても許されるんだろうけれどいざ駄目だと言われたらそれこそ元も子もないので飛んでみたのだけれど。
「ごめんなさい・・・でもやっぱり今まで誕生日は一緒にいられた分寂しくなっちゃって」
「ははっ、まあそこは素直でよろしいってこった。
まあ俺も会いたかったし、その気持ちは嬉しいぜ?」
「元親さんっ・・・!」
嬉しいのと、受験のせいでしばらく会うのを我慢して抑えていた寂しい気持ちが混ざって夢中で元親さんに抱きついていた。
元親さんは元親さんで受け止めて、頭を撫でてくれる。
「今日はえらく甘えてくんじゃねえか」
「だって・・・」
「悪いとは言ってねえじゃねえか、な?」
なだめるように笑いかけながら元親さんは私の顔に手を伸ばすと口付けを落とした。
突然の口付けにも、ただそれがあたたかくて心地よくて愛おしくて。
無自覚のうちに体が動き、いつの間にか自ら口付けをすがっていた。
「・・・名前、誕生日おめでとさん」
「あ、ありがとうございます」
たった今の口付けのせいか、見つめられても、声をかけられても、恥ずかしい。
・・・昔はこれより先のことだってしてたっていうのに・・・・・・。
生まれ変わって、純情になってしまったらしい。
今言葉を紡ぐだけで精一杯だ。
「あー、まさかそこまで照れちまうなんて思ってなかったんだが」
「仕方ないんです!
こっちの体じゃまだまだなんです!!」
「・・・・・・・はははっ、まだまだって。
そのうち慣れてもらわねえとな?」
「そのうちって・・・ひぃっ」
恐る恐る聞いてみるとにやりと笑う元親さん。
聞かなきゃよかったなんて思う前に元親さんが私の顎を取り、自分の方へ向かせて答える。
「18になったんだ、そりゃ遠くねえだろうな?
サヤカに散々手出せねえとこ笑われてきたんだぜ、汲み取ってくれや旦那の気持ち」
意地悪そうに、でもどこか懐かしく思う元親さんの笑顔に私は首を縦に振るしかできなかった。
元親さんにとことん惚れ込んでしまったのは私。
それでも、今度こそ私以外見れないように・・・とことん惚れてもらいましょうか。
「名前?」
顔を覗き込む元親さんの手を取り、今度は私から唇を重ねる。
身分も家柄も地位も何もかも取り払われた現代。
元親さんの気持ちを掴めるかどうかは私次第。
「絶対私以外見れなくしてやりますからね」
「そうかよ?」
今はこうやってあしらわれてもいつまでも一緒にいられたらそれでいい。
「元親さん」
「ん?」
「大好きです」
「・・・・・・俺もだよ、馬鹿野郎」
そして、こうやっていつまでも愛を確かめあえたらいいな。
しばらく会えなくても寂しさを誤魔化せるように。
ただぎゅっと元親さんに抱きついた。
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