sixteen―恋なんて

15歳になったと思えばあっという間に16歳。
年々早く年を取っていく気がする。
でも縮まることはない元親さんとの年の差。


「名前も16か、早いな」
「そして未だそういうこと言うってことは子供扱いじゃないですかね、元親さん?」
「そうか?」

2年前、子供扱いしてないなんて言われたのはいいものの、今までのことを思い出してよく考えてみれば子供扱い。


花火行った時も
元親さんのおうちに泊まった時も
文化祭の時も

なんだかずっと保護者的な目線だった気がする。


「まあ認めざるえないこともねえが・・・だって今までの周りにいた女なんてサヤカだろ、鶴の字だろ、んで将だ。
 お前さん見てっとこう、和むっつうか、落ち着くっていうか」
「確かにそんな人たちと比べられたら私女として見てもらえる自信ないですけど」
「んなこたねえぜ?
 ・・・まあずっと呼び方も一緒だし、敬語使われてるし、仕方ねえこともあるんじゃねえのか。
 というか、去年ちゃんと元親って言ってたくせに何で今また戻ってんだ」


去年の誕生日は・・・確かに背伸びしたくて、キスしようとか考えて『元親』って呼んでみたんだっけ。
普通のことなんだろうけど、私にとってはそれが恥ずかしくって。
更に言ってみると、元親さんに対しての元親っていう呼び方は昔だったら考えられないわけで、馴染みがないんだ。


「今はまだ元親さんって言わせてください」
「じゃあいつになったら名前も呼び捨てで、敬語も無くなるってんだ?」
「・・・大人になったら」
「大人って、じゃあ俺が子供扱いしてても文句は―・・・そういや名前。
 お前さんもう結婚できる歳なんだよな、16てこた」
「はい、そう言われてみればそうだったり」

結婚なんて言葉を言われれば、私も大きくなったんだなと少しばかり思ってしまう。

「ちっとは大人に近づいただろ、今までよりは。
 ・・・あとこれは断ってもいいんだが、まあ断られたら俺がだいぶへこむんだが」

髪を掻きむしりながら照れくさそうに話を続ける元親さん。


「婚約指輪、受け取ってくれるか」
「へ?」
「だから、ほら」

ポケットに手を入れて、小さな箱を取り出した。
綺麗にラッピグされた包に、連想させる輪。

「親御さんにはもう挨拶はしちまったけど名前に何も言わずに話をしちまったから。
 お前さんが16になった時に本当にいいのか聞こうって思ってた。
 本当は将来を狭める真似はしねえほうが良かったんだろうが」
「私でいいんですか?」
「今更何言ってやがる」

指輪を取り出されて、欲しいかなんて聞かれて欲しくないわけがない。


「元親さん、私をもう一度お嫁さんにしてください」
「ああ、勿論だ」

指輪を受け取る手が震える。
そして、元親さんがその手―、左手の薬指に指輪をはめる。

幸せすぎて何も言えない私に元親さんの口づけが落ちた。
でもそれは今までと同じような触れるだけのようなものではなくて。
元親さんは顎を取り、唇を重ね、元親さんの舌は閉じた口の中に入ってきた。

いきなりで凄く驚いてしまったのと、初めての感触に体が咄嗟に拒もうとしたのが重なって軽く抵抗をしてしまったのだけれど。
そんなもの、元親さんの前では関係なかった。

更に腰に腕が回り距離が縮まる。
離してくれたのはしばらくしてからだった。


「餓鬼にんな真似しねえよ、わかったな?」
「でも・・・」
「でももねえ、まあ俺は待ってるって約束したからゆっくり大人になっていけ」

先ほどの雰囲気とは打って変わって元親さんは余裕を纏って笑った。
その顔に去年はなかなかできなかった私からのキスをして真っ赤にさせた。

元親さんに大人にされるのも恥ずかしいけれど望んでるところもあるだろう。
でも私は自分でも成長してると、してやったりと笑った。


恋なんてものはどこに行ったのだろう。
愛なんてものはいつまでも私の中にあってほしい、そう薬指に光る指輪に願った。



  


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