第六十一話

それで・・・結局一度家に帰った訳だけど。
時間経つなと思うほど時間は早く過ぎていくもので。
残酷にも早々夜になった。


窓飛び越えるとかどこの少女漫画なんだろうとか思いながらも窓を開けて見る。
冬なのに窓開いてるのとか心配してみたけどちゃんと開いてた。
元親さんが風邪ひかないといいんだけど・・・。

どちらにせよ、私が行かないと窓が閉めれないし。
覚悟を決めて足を掛け跳んだ。



恐怖を感じてる時ほど冷静になれたりするもので無事着地できた。
音も全然立たなかったため元親さんは元から寝ていたらしく起きていない。

これからだというんだけど。
でも親貞さんが言ってたのは起きてる時に言わないと意味がないからなあ・・・。
どうしよ。

とりあえず元親さんのところに近づいてみた。
起こすのも躊躇われるんだけどな・・・。
今日の所はもう帰ってもいいかな、そう踵を返そうとしたところで


「名前・・・」


名前が呼ばれた。
一瞬ドキッとしたけど寝てるみたいだし。
寝言だった。

でも寝てる時まで考えてくれてるんだったら嬉しくて今日はもういいやって思って再び窓に足を掛けようとした時、私はバランスを崩した。
咄嗟に窓を掴んだから落ちはしなかったけど、その時にガンっと大きな音を出してしまった。


「ん・・あれ?」

とうとう元親さんも起きてしまった。
でも幸い寝起きの為どこか寝ぼけてる。

「名前ー・・・?」
「も、元親さん!」
「・・・んー?」


親貞さんに言われたようにと。
元親さんの所に近づいていく。

「元親さん・・・」
「どうした?」
「・・・・・・・・・」

元親さんは黙って首を傾げてる姿が意外に可愛かったりするとか、そういう訳もあるけど・・・どうしよう、凄く緊張するよ。


「もとちか・・・お願い、私を受け止めて?」

そのまま自分から首に手を伸ばして抱きつくと、羞恥心持っていたくなかったとか思うことをした訳で。

元親さんはというと黙った。
抱きついてるけど内心凄く焦ってる訳だけど・・・。


「名前・・・」

私の名前を呟いて元親さんは布団の中に私を引きずり込んだ。
状況に付いていけてないんだけど・・・。

「ぎゅってするだけだから、ほんとにぎゅっとするだけだから。
 ったく、どんだけ可愛いんだーぐっ!」

凄い力で抱きしめられたと思えば、呻き声を上げて元親さん気絶したみたいだけど。
布団の外を見れば親貞さんがいた。


「義姉上、これでこいつはこれから義姉上を心配させてしまわれることはしませんよ。
 しようとしたら今日のことをあやふやに話せば大丈夫ですから」

にこっと笑ってる訳だけど親貞さんちょっと怖い。
なんか笑顔に闇が掛かってる。

「ご迷惑お掛けしました、じゃあ私帰りますね」
「お気をつけて。
 でもやっぱり兄貴に義姉上を取られてしまうのは癪ですね」
「ほんとに親貞さんは不思議な人ですね、そんなことを言うなんて。
 また会えますよ、あなたの運命の人にも」

私だって会えましたし、そう付け加えてみると親貞さんも笑った。


さて、気絶してしまった元親さん凄い体制で寝てる訳だけど。
後は任せてもいいかなと思って親貞さんを見てみればぱっと敬礼をしてくれた。
ちょっと罪悪感があるけれど、そろそろ家に帰らないと危ないと思いもう一度足を掛けて跳んだ。






  


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