第六十話
駆け込み寺のような勢いで二人の部屋に入ってみると案の定のんびりとしていた。
「義姉上、どうされました?」
「顔が赤いようですけど風邪ですか!?」
顔赤いと言われるとは思ってなくて頬に無意識に手を当てたみたら・・・思い出す舌の感触。
私の中の熱がさらに上がる。
「・・・ちょっと逃げてきました」
冷静を装いながらもそう言ってみれば苦笑する親泰さんに嬉しそうに笑う親貞さん。
この場合どちらの対応に喜べばいいのかわからないけどね。
「兄貴が何かしましたか?」
「元親さんはちゃんと我慢してると思いますよ。
でもやっぱり私だとたぶん法的にぎりぎりなんですよね・・・申し訳ないというか、だからと言って不名誉な名を渡すことになってもいけませんし」
悩みはこれだけれど。
どうしようもない・・・。
「あの、義姉上。
たぶんアイツだったら義姉上がちょっと仕掛けただけでもたなくなると思います」
「たしかに理性とかじゃなくて、命が」
「命!?」
え、元親さん弟さんたちに命の心配されてるみたいだけど。
まず命もたないとか私何者だっていう。
「試してみたらいかがですか」
「仕掛けるって・・・?」
「今晩にでも窓から飛んできてください。
窓がある部屋に兄貴を寝かせておきますから、それで兄貴に思いっきり甘えた声でこう言ってください」
親貞さんが耳を貸せという仕草をして耳打ちした。
「・・・・・・」
言った本人はなんともない顔してるけどどことなく笑ってる。
まさか録音する気じゃないんだろうと信じてるけど。
ちらりと親泰さん見てみるけど目でなんとなく大丈夫だと言ってくれてる。
ちなみに親指立ててグッドラックとされてる。
ここまで来たらする方向なのかな。
元親さんに嫌われないかな。
「名前、やっぱここか!」
「ひっ、元親さん!?」
ドアが開いたと思えば息を切らして走ってきた元親さん。
「名前・・・悪かったな、心の準備もできてなかったよな」
「い、いえ、こちらこそっ・・・その、いろいろすみません・・」
元親さんが周り気にせずごめんなとぎゅっと抱きしめられることも恥ずかしいんだけど。
何より今日の夜夜這いみたいなことすることになりそうなのが、考えただけで恥ずかしかった。
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