第五十九話

目が覚めると元親さんの顔が目の前にあった。
一瞬戸惑うも昼寝をしてたんだと思いだし、激しくなった鼓動を落ち着かせた。

まだ寝てるのかな?

少し疑問に思い、顔に手を伸ばしてみた。
元親さんの頬は綺麗だと思っていたけど、思っていたよりも綺麗だった。
何かお手入れしてるんですか、っていうレベルの綺麗さだった。
そういや、前は海とか言ったってちゃんとお手入れしてたらかねえ。
本人は隠そうとしてたみたいだったけど結局はバレバレだった。


「やっぱり姫若子様が抜けてなかったり・・・?」
「それは聞き捨てならねえな」

呟いた瞬間に開けられた瞳。
私はちょっと地雷を踏んでしまったかもしれない。


「で、誰か姫若子だって?」
「そのようなことは言っておりませぬっ、決してそのようなことは・・・」
「・・・まあもういいけどよ。
 こっちじゃ潮風浴びねえんだから自然に肌がこうなってんだよ、手入れもするほどじゃねえ」
「左様ですか」


目をなんとなく逸らしつつの会話だったけどそろそろ何か思われたらしい。
今でさえ顔はかなり近いのに目を合わすために元親さんの両手で顔を挟まれた。

「も、元親様っ!?」
「なんかさっきから口調が戻ってんぞ?」
「え、あ・・・確かに・・・」

確かに私今更だけどかなり口調がおかしかったんだね。
元親さんを様付だったし。


「それはわかったんですけど。
 そろそろ離してもらえまふぇん、いひゃいっていひゃい」

あろうことか挟まれたうえに頬の肉を引っ張られた。
御本人なんか楽しそうだし。
ふざけてやってるけど力強いし・・・痛いっ。


「ほほひひゃひゃーん」
「何て言ってかわかんねえな・・・気持ちい・・・・・・」

元親さんって呼んでるのぐらいわかってるくせに・・・。
和んでるみたいですけど。
こちらが痛いだけなんですけど。

私も腕を伸ばして元親さんの頬を引っ張った。

「なにひぃああるっ!」

答えようとも私のうまく答えられないので無言で頬を引っ張って遊んでた。
元親さんもついに諦めて無言で遊んでいたので沈黙が流れた。


終わったのはしばらくしてからだった。
二人で同時に吹き出したところで終わりを告げた。




「もう引っ張られたところが痛いです」

痛いところをさすってると元親さんが笑った。

「俺も結構痛かったぜ?」
「そんなこと言ったって大人と子供じゃ力の差があるんですー」

なら、そう言った元親さんは不意に私の頬に唇を当てた。
声も出せずに無言で固まってると生ぬるい感触が頬を伝った。


「な、舐めないでください!!」
「えー、何でだよ?」
「あっ・・・だか、ら・・変な声が出ちゃうんです、っ」


訴えてみるものの余計に上がる元親さんの口角。
ニヤリと笑った元親さんはさらに首筋を舐めた。

「やっ」
「や、じゃねえよな?
 んな声出しといて」
「元親さんの馬鹿!もう知らない!!」

許容範囲の行動をされた私は助けを求めるべく部屋を出た。
向かう先は一つしかない。

うん・・・親貞さんと親泰さんの所だ。






  


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