第五十八話
朝目が覚めて支度を整えて元親さんの所へ行こうとした。
待ちに待った元親さんだ!・・・そんなことを思っていたところ母さんに止められた。
「名前、ちゃんと説明しなさい」
「え、何が?」
「元親君との関係をちゃんと母さんにわかるように説明しなさい」
「っ!?」
関係って・・・関係?
昨日そんなばれるような身振りを母さんの目の前でやった覚えはなかった。
・・・でもよく考えたら昨日正座もしてない母さんが足痺れたとか言ってたのは私の為だったのかな・・・・・・?
「べ、別に元親さんとは何も」
「母さんは怒ってる訳じゃないの、でも11歳も離れてるのよ?
名前が好きだってことはわかってる、でも元親さんはどうなの?
まさか気持ちに応えてもらったってことはないでしょうね」
応えてもらったと言えばどうなるんだろう。
反対されるのかな・・・。
「私だってわかってる、11歳さだって。
元親さんだって私に本気になる訳ないじゃないの」
嘘だとわかっていても胸が痛んだ。
11歳の距離はいくら足掻いたって縮められない、だからそれが余計に負担になってるんだろう。
「そうなの?
ならいいけど、いってらっしゃい」
母さんはいつものように仕方ないと笑って私を見送った。
でも私はひきつらせてしか笑えなかった。
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「何か今日ずっと浮かねえ顔してんな?」
「はいっ?」
元親さんの家についてお茶を出されて一緒にのんびりと過ごしていたのだけれどずっと頭にあるのは母さんの言葉。
別に怒られたわけでも反対されたわけでもなかったのに・・・。
それに母さんの言うとおり世間的にこの関係は危ないと思われて仕方がないのだろう。
前世がなんて話にならない。
私が早く大人になるしかないんだ。
「寝れなかったのか?」
「ちがーっ・・・はい」
本当はちゃんと寝れたけどここで素直に言ったら元親さんは理由を聞くんだろう。
私は話すまで聞くんだろう。
「じゃあ腕貸してやるから眠いなら寝ろよ、な?
一緒に昼寝しようぜ」
「っ!?」
心配掛けまいと嘘を付いたらだいぶ大きな結果になった。
確かに嬉しいけど、嬉しいけど恥ずかしい。
それに別の部屋にはまだ親貞さんも親泰さんもいる訳で・・・。
もし見られたら恥ずかしいのがもっと恥ずかしくなるし、親貞さんに見られるなんて考えたくもない。
きっと凄いことになってるんだろうね、親貞さんが。
親貞さんは年齢的に子どもがいても不思議はないんだけど。
「嫌か?」
「嫌ではないです・・・けどやっぱりそういうのは、親貞さんも親泰さんもいらっしゃいますし」
「親貞の心配はすんなよ。
俺も日があったかくて眠くなってきたしな?」
元親さんは大きなソファーに私を転ばせ、自分も転んで腕枕してくれた。
腕枕が普段の枕より快適だということはわからなかったけど何だか凄く気持ちよかった。
元親さんの体温がたぶん私にとっては気持ちいいんだろう・・・。
少し上を見上げれば長いまつげが見えた。
本当に私は運がいいんだろう、またこの人に会えて・・・・・・。
元親さんが寝たのを確認して自ら唇を押し当てた。
寝てる間のは仕方ないかもしれないけど私がするにはこれが精一杯だった。
「やっぱり私は・・・もう離れたくないよ。
誰が何が言おうと。
この時間だけで時が成ればいいのに」
叶わないことだとわかっているのにそう願わずにはいられなかった。
そんな私はいつしか眠くないはずだったのにすっかり元親さんの腕の中で眠りに落ちていた。
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