第五十五話

戻ってみると嬉しそうな親泰さんに、捨てられた子犬の瞳をする親貞さん。
・・・うん、罪悪感凄いよ。

「やっと戻ってきたか」
「あ、遅くなってごめんなさい」
「我々は別にそんなことはいい、元親に何もされなかったか」
「姉様・・・首に跡が・・・・・・」

鶴姫ちゃんが指さしたのはさっき元親さんにつけられた跡。
元親さんはきょとんとしていたが、思い出したらしく嬉しそうに笑っていた。

「よくも名前にそのようなものを」
「孫市ちゃん、落ち着いて!こんなの前にもよくあったことだから!」
「それとこれとは別問題だ!元親、今すぐ自首しろ」
「黙って聞いてりゃ・・・だいたい好きな女に手出して何が悪い!
 俺はこれから先4年はほとんど生殺しって言っても過言じゃねえんだぞ」

私が18になるまで待っててくれるはらしいけど。
確かに成人男性にとって4年間は厳しいんだろう。

「元親さん・・・」
「ん、どうした?」
「4年間が無理なら、その心まで私から去っていかないというなら私は風俗でも何でも言ってもらっていいです、信じてますから」
「馬鹿野郎、んなこと言われたって行かねえよ。
 言ったろ、待ってるって」

こういう時に本当に自分が子供だなって思える。
元親さんのためにと思っても結局は私の為に元親さんが引き下がった。

「義姉上、もし兄貴がそんなことしようというものなら俺が死を持って償わせますから安心してください」
「だからんなことしねえって!
 俺が名前以外の女で満足するわけないだろうが」


そう言って前は嫁さん取ったくせに、なんてことは言わなかった。
というか元親さん見てて言えなくなった。
ちゃんと好きでいてくれてるってわかって嬉しかった。

「この先何があろうとも俺が愛する女は名前だけだからな」
「元親さん、私もです」
「義姉上、俺もです」
「だから親貞は入ってくるなああああああああああああ」

やっぱり元親さんは弟さんたちといるといつもより反応とかおもしろくなる。
時には初めて見る表情だってある。
だからきっとまだ知らない表情とかがあるんだろう。
だから・・・これから先ずっと見つけていけたらいいなと思った。

「親貞さんも変わりませんね、相変わらずです」
「それは義姉上も同じことです、俺の愛は今も変わらず義姉上に行ってます。
 現代で言うとラブですね」
「じゃあたまには私に構ってやってください」
「もちろんです、義姉上の気が変わったら俺が娶らせていただきますからすぐに言ってください」
「その心配はないですよ、大丈夫です!」
「そうだぜ、んなこと言ったらすぐさまこいつに仕置きをしなきゃなんねえからな」

元親さんがそう言い切ってしまうと肩をがくんと落とした親貞さん。
この二人は相変わらずどっちも調子を変えられてるみたいだね。
親貞さんは普段真面目な人だし。

というか、私にはあの元親さんの仕置きに対して悪い予感しかしないのは何でなんだろう。
いやいや、私普段から従順ですから。
そんな仕置きって・・・。

「大丈夫ですけど仕置きの免除はしてもらいたいもんですね」
「仕置きじゃなきゃいいってか、意外に大胆な発言もできるようになったな」
「え、別にそんな大胆な発言なんてしてませんよ!?」

嬉しそうに元親さん笑ってますけど、私本当に心当たりが一切ない。
鶴姫ちゃんも両手で口塞いであらまあ、みたいな感じでちょっと頬を赤く染めてるけど。
孫市さんも片手で頭を押さえてる。
え、私変なこと言ったの?


「まあいいじゃねえか、せっかくめでてえ日なんだからよ」
「そうだな、長曾我部。
 貴様は晴れてロリコンだということが確証したな」
「なんでそうなるんだ!
 だいたい名前は前も嫁にもらったんだから別に年の若さで取ったんじゃねえよ」
「貴様は晴れてロリコンだということが確証したな」
「だから繰り返すな!」

そんな元親さんと元就さんの会話がしばらく続いた。
自分ではロリとか思ってないんだけど。
まず童顔じゃないし。
どっちかっていうと実年齢より上に見られること多いしさ。


「義姉上はそのままでいいですよ。
 兄貴にはもったいないぐらいのお方です」

私の気持ちに気付いたのか親貞さんが声を掛けてくれた。
それが世辞だとはわかってもそんな一言で気持ちが楽になってしまうんだから私は案外楽天家なのかもしれない。


「嬉しいですけどまあ頑張って成長しますよ」
「成長された義姉上も大好きです!」


それでも、やっぱり親貞さんには敵わないこともあった。





  


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