第五十四話

「誤解してるようだから言っておくが俺があの時名前呼び間違えたのだって理由があんだぞ」
「へえ、今更言い訳ですか」
「まあそう言うなって。
 膝枕なんてあん時一回だろ、普段してくれなかったし。
 大事な奴にはなかなかんな事頼めなくて嬉しすぎて・・・緊張したんだよ」

緊張、した・・・?
まさかあの時に?

「それでだいたいやるのは小少将だからよ」
「つまり私がちゃんと尽くせぬ女だったと」
「違えよ、だから好きすぎて・・・ったく、俺ばっかに言わせんなよな」

わかってるくせに、と頭を掻きながらこちらを見る元親さん。
頬がほんのり赤く染まっていた。
こんなところ見せられて緊張しない方が無理だ。

「じゃあちゃんと私だけだったってことですか・・・?」
「そうだよ、400年も根に持つなっての」
「実質生まれたのは14年前ですよ」
「屁理屈だ」
「屁理屈じゃないです」
「ほんと敵わねえ」

そう言って元親さんは満足そうにしていた。
そんな笑顔に私はもう言うまでもなく落ちているんだろうね。


「親貞には気を付けろよ、時代も変わったし」
「何をですか、時代変わったって私は元親さんを選んだんですよ」
「いやいや、そういう訳じゃなくてな。
 あいつ名前が隣に来たって行っただけでこっちにまで押しかけようとしてたからな」
「そ、それは凄いですね。
 私も幸せ者・・・なんですかね」
「幸せになら俺がしてやっから」


元親さんの気持ちが変わらないように、今はそう祈るしかできない。
だって、私はまだ子供だから。
だから・・・だから、今は信じる、元親さんのことを。


「また名前ちゃん呼びに戻らないといけないんだよな」
「え、何でですか?」
「今はまだばれちゃあいけねえだろ、俺が捕まっちまうし」
「自覚はあったんですね」
「まあ俺はロリコンって訳じゃないけどな。
 前にも言った通り好きな奴だから下心も持つんだよ」

未だに根を持っていたらしい。
でも笑いながら言うから元親さんらしいっていうか、そんな感じがする。
正直今私が下心持たれてるのかっていうのは謎だけど。
まだ中学生の体型だし。

「今後の成長にご期待ですね、なんて」
「そうだな、前のままでは止まらねえよなさすがに」
「なっ・・・いくら私の体型がよくなかったからって」
「別に文句は言わねえよ、俺が育ててやってもいいしな」
「・・・そう言って大した結果も出なかったくせに」

そう言うと地雷を踏んでしまったのか、踏まなかったのかそんなことはわからないけど。
元親さんの笑みに鳥肌が立った。

「ほお、なら俺が育てるのには文句はねえんだな名前ちゃんよ?」
「・・・・・」
「なあ?」
「・・・・・・・・・・・」

精一杯目を逸らそうとはするけど元親さんが目線を合わさせて、逸らしての繰り返しで結局顔を固定され、顔と顔との距離は数センチとなってしまった。

「赤くなっちまって」
「そんなことされたらなりますよ」
「そんなことばっか言ってるから俺の理性が危なくなっていくんだよ」
「そのような発言をしないでください、中学生の性教育の低さを舐めないでください」

我ながら言っていることは相変わらず大人げない。
でもそんな私に合わしてくれているような元親さんの言葉が嬉しかった。







  


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