第五十二話

元親さんに言いたいことも伝え終わってしばらく海を眺めていた。

「こうやってまたずっと一緒にいられるんだよな」
「本当に嬉しいです」
「もう本当に俺の女になったんだから前みたいなフェイクじゃないから本格的に敬語はなしにしねえとな?」
「あんなにひどかったのにですか!?」

元親さんと花火を見に行った日。
あっという間に月日は過ぎたんだなと感じる。
あの時は確かにずっと緊張して元親さんを見るだけでもしんどかった。

「してくれねえのか?」
「・・・頑張りますよ」

でも元親さんがまた私をこうやって選んでくれたのだから頑張るしかないんだろう。
応援してくれた人の分までも。

「また膝枕とかしてくれよな」
「・・・頑張り、しますけどしている間に他の女性の名前を出したら覚悟しておいてくださいね」
「もうんなヘマはしねえよ。
 あれから400年以上は経ってだぜ、さすがに俺でも誰が一番大事な奴かっていうくらい判断はつく」

つまり言い換えたら私が一番大事だと言ってくれているということで。

「俺以外の男みたら許さねえからな」
「私が誰を見るっていうんです?
 安心してください、高知は来たばっかりだし女子校だし、出会いは皆無ですよ」

そんなことを言っていたら元親さんは不意に私の唇を塞いだ。

「元親さっ・・・!?」
「18まで俺我慢できんのかな、ほんっと」
「私・・・他の女性を抱いていらしても我慢します、だから気持ちだけは私に置いておいてもらえませんか」
「馬鹿!冗談に決まってんだろーが。
 んな悲しいこと言うなよ、いくらなんでもそんなこと言う奴はもういねえよ。
 ・・・ちゃんと待ってるから、だから俺に初めて残しとけよ?」
「当たり前です」


その前にちょっくら教えといてやるか、そう言った元親さんは私を抱き寄せたかと思うと首筋に顔を埋めた。
息がかかるたびこしょばくって変な声は抑えないとと思ったその時、肌をきつく吸われた。

「っぅん・・・」

唇が離れて見えた元親さんの口元は弧を描いていた。
この大人は・・・幼気な女子中学生に・・・・・・・・・・。

「これで他の野郎には取れねえな」
「取られませんって!!」
「消えたらすぐ付けてやるからな、安心しろ」
「な、何に安心ですか!?
 これこそ不良少女なんじゃ・・・」

人に言っておいての、言い出しっぺが不良少女にさしたものだ。
これはある意味危ないと思う。
普通に考えたら25歳と12歳じゃ犯罪なんだよ。
『枕草子』習った時に先生が言ってたもん、帝に定子が嫁いだとき定子13歳、帝11歳・・・これはもう犯罪ですね、って。
3歳差と11歳差だよ。
元親さんには自覚がないっていうか、なんていうか。


「私が一方的にされるのはなんか腑に落ちないです」
「なら俺に何かしてみっか?」

してみるか、と言われても。
14歳の女子にどこまで考えれるものか。
そうした時に考え付くのはやられたらやり返せの原理。

元親さん向き合って膝と膝の間に入り込んで抱きつくように距離を縮めた。
自分でも単純だとは思ってる。
だけど、それしか方法が思いつかなくて。
でもさすがに同じことをするのは恥ずかしくてできない、というかそんなことをして溜まるかという感じなんだけど。

私は顔を近づけるだけで緊張しているというのに元親さんは嬉しそうに笑ってる。
それは大人の余裕が現れた笑顔なんだろう。
そんな元親さんに口付け一発ぐらい・・・一発ぐらい・・・・・・とか思ってたけど本当に恥ずかしくてできなくてやり場を失った私は勢いよく元親さんに抱きついた。

「名前?」
「キスの一つでもとか思ってたのに・・・恥ずかしくてできませんでした。
 だから・・・」
「だから?」
「私が大人になるまでは元親さんが、その、えといろいろご教授願えたら、と・・・」

言葉がぐちゃぐちゃになった私を元親さんが笑った。
そして今度は目元に口付けを落とした。

「ゆっくりでいいんだよ、焦らなくたっていいんだ。
 待ってるから。
 愛してるから」

ここで甘い言葉の一つでも私が言うべきだったんだろう。
でも言えないのは元親さんでもわかっていたからか頭を優しく撫でて私を諭すように笑った。





  


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