第四十四話
季節はとうとう冬になった。
もう木の葉は全て散ってしまい、寂しい季節だ。
そして今日・・・12月12日。
元親さんと約束した日だった。
私はいつもより早く起きて支度をして約束の3分前に家を出た。
隣だからすぐに来れる訳なんだけど。
「あれ・・・名前さん」
インターホンを押そうとしたところで声を掛けられ、振り返って見るとそこにいるのは親泰さんだった。
「お久しぶりです」
「いえ、こちらこそ。
というか兄貴がいつもお世話になっております」
「いえいえ、私の方がいつもお世話になってばっかりですから。
とりあえずインターホン押しますね」
一つ断りを入れてインターホンを押してみるとすぐに元親さんは出てきた。
何故だか慌てで出てきたみたいな気もするけど。
「おう、二人ともありがとな!
上がってくれ」
「お邪魔します」
「上がるぞ・・・兄貴今日ぐらい寝坊すんなよ、ったく頭いつもよりはねてんじゃねえか」
「うっ・・・」
図星だったのか何も言えずに先に家の中に入っていった元親さん。
慌ててたように見えた理由はこれか、と私も納得する。
家の中に上がらせてもらうといつものように今に通された。
親泰さんは泊まるつもりで来たのか大荷物だった。
面倒臭いと言いながらいそいそと鞄からいろいろと取り出してはいるが兄の為に遠いところから休みの二日を潰せるなんていい人だと思う。
「名前ちゃんは用意・・・も何もねえな。
んで親泰もそろそろ終わったらしいし、そろそろ行くか」
「そうだな、さっさと車出せよ」
「はいはい、わーったよ!」
荷物をまとめて玄関を出る元親さんと親泰さん。
私も付いていくけど一つ頭に浮かんだ疑問があった。
「そういえば今日ってどこにいくんですか・・・?」
「あ、言ってなかったか・・・」
「大事なことも何も言えてないのかよ。
名前さん、・・・もう名前ちゃんでいいか。
兄貴の為に今から何も言わずに、聞かずに付いてきてやってくれねえか?」
元親さんの代わりに答えた親泰さんの顔は真剣そのものだった。
それにしても私やっぱり親泰さんには彼女じゃないとか結局ばれてたんだね。
「もし名前ちゃんが不快に思ったらその時点で兄貴を全力で殴っていいからさ」
「わかりました!」
「お、おい・・・」
私の答えに勘違いをしてしまったのか元親さんは苦笑いをした。
それでもそれを放って車に乗り込んだ。
それから数十分車に揺られて私たち三人は海辺を走った。
冬の海は何だか荒れているように見えた。
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