第四十二話

しばらく抱っこされてるととうとう家の近所に来た。
元親さんはというと私の体重をずっと抱えて歩いてきたというのに息は全然荒くなっていない。

「着いたな・・・家からもう抜けねえよな。
 早く寝ろよ」
「できるだけ早く寝ます」
「できるだけって・・・まだ眠くないのか?
 今日っつうか、実質昨日は文化祭だった訳なのによ」
「一度寝てしまったからですね、目が覚めてしまったようです」

私は夜でも昼でも眠ければ寝てしまうタイプの人間だ。
それでも今眠くないということは本格的に目が冴えてるということだ。

「疲れたまってんじゃねえのかよ・・・目冴えただろうが冴えてなかろうがさっさと寝ろ!」
「は、はいっ!」

それでも元親さんの勢いに負けて頷いてしまった。
電気もすぐに消さないと怒られそうな気がした。


「元親さん、ありがとうございました。
 おやすみなさい」
「おう、おやすみ名前ちゃん・・・ちょっと待て」

元親さんは私の腕を掴むなり手前に引っ張った。
おかげで距離はだいぶ縮まった。

「どうしました?」
「辛いことあるなら俺が助けてやるからよ、だから一人で勝手にどっかに言っちまうんじゃねえぞ。
 俺の前からいなくなんなよ」
「元親さん・・・。
 私はどこにも行きませんよ、元親さんに不良少女と思われたって私は不良少女じゃありませんから」
「名前は不良少女なんかじゃねえよ、俺の大事な・・・」

元親さんが言葉の続きを言おうとしたところで一瞬時間が止まった。
俺の大事なー、何だったんだろう。
元親さんとしては言っては駄目だと思ったのか、言う相手が違うと気づいたのかわからないけど。
誤魔化すように頭を撫でられて家の前で背を押された。


「おやすみ!」
「おやすみなさい」

私がいいように受け取ってもいいのかわからない。
現実的に考えたらどうなるのかことぐらいわかってる。
それでも、夢ぐらいみたっていいじゃない。

去っていく元親さんの後ろ姿に泣きそうになった。






  


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