第三十七話

文化祭の開会式みたいなものが終わると教室にも人が入ってきた。
お客さんだと思うと嬉しくなった。
私は午前中は厨房担当だった訳で予想以上に多かった注文をこなしていった。
そして、昼の休憩も終わるととうとう私もホールへ出ることになった。
正直憂鬱だ。
着物はミニスカ丈で・・・何処にサービスしてるんだと発案者を疑ってしまうほど私にとってはやっぱり恥ずかしい格好だ。
それでも笑顔は絶やしたら駄目だからもうどうせ誰も私なんて見てないからと開き直っていた。
開き直ってからはしばらく気持ちも持っていたもんだけど・・・ついにそれが崩れる時が来た。


「いらっしゃいませ!」
「お、おう・・・すげえな、その格好」
「も、元親さ・・・ん!?」

呼んでもなかった元親さんの登場。
予想外すぎて一瞬私としては気が抜けそうになったけど、とどめの一言。
いや、自分で似合わないとは思ってたけどいざ好きな人に言われるとね、傷つくものだよ。
そんなすげえなとか言わないでくださいよ。
気持ちを心の中だけで抑えられず少し恨めしい顔で見ていたら元親さんはそれに気付いたのか知らないけどにかっと笑った。
・・・笑われても傷つくものは傷つくんだけどね。

「それではこちらへどうぞ」
「ありがとな。
 それにしても名前ちゃん、えらく可愛い格好じゃねえかよ」
「え?」
「よく似合ってんぜ」

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え、元親さんがすげえなって言ったのって悪い意味とかじゃなくていい意味だっていうことだと受け取っていいのかな?

「お世辞だとわかっていても嬉しいです、ありがとうございます」
「いやいや、世辞なんかじゃねえぞ。
 ほんと可愛いんだからよ、変な男に言い寄られても耳貸すんじゃねえぞ?」
「も、元親さん・・・・・・」

どうしよう、私今絶対顔赤い。
そして、変な笑い方してるだろう・・・。
どうして、この元親さんという人はこうも恥ずかしがらずに人に恥ずかしいことを言えるんだろうね。

「それはともかく、今日は来てくださってありがとうございました」
「まあ俺が来たくて来ただけなんだけどな。
 さっきサヤカの電話もあったし、昨日の夜にゃ鶴の字の電話もあったからな」
「あらら、あの二人は・・・」
「何よりお前さんに会いたかったってのが理由だけどな」
「っ・・・」

確信犯でないのが恨めしいよ、ほんと。
それでも嬉しがってるのが他でもない私だった。

「・・・ありがとうございます。
 ではご注文をどうぞ」
「そうだな、これ頼めるか?」
「かしこまりました、ゆっくりしていってくださいね」
「おう、ありがとな」

元親さんの注文を取り、厨房へ回ってみるとすぐさま何人かの子に囲まれた。
ちらりと見えた雑賀先生の顔は少し笑っていた。

「ねえ、さっきの格好いい人と知り合いなの!?」
「まあ、うん」
「あの人いくつなの?」
「名前、凄く仲良い感じじゃなかった?」
「どういう関係!?」

女の子はほんとにこの手の話が好きらしい。
私は聖徳太子でもないので一斉に話しかけられて答えられる訳がない。

「皆落ち着いて!」
『落ち着けないよ!』
「ええ!?」

即座に返された反応で驚いたものの一人が笑った。

「冗談冗談、でも後でじっくり話聞かせてね」
「でも面白い話とかないー・・・」
「名前ちゃん、その話は後でじっくり聞くから早く持ってって!」

どうやら私に拒否権はないらしく。
ただ言われたとおりに注文の品を運ぶしかすべがない私だった。





  


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