第三十三話
「でも、親泰もそろそろこっちに来んじゃねえかな・・・」
「親泰さんですか?」
「ああ、12月になると毎年心配してくんだよ」
12月・・・何かあったのかと不思議にはなって考えてみるけど思い浮かぶのはクリスマスや年末の行事ばかり。
それでも元親さんには親泰さんに心配されるほどのことがあるんだろう。
「もういいって言ってんのにな来るんだよ」
「・・・そうですか。
でも元親さんが心配される状態になるならその親泰さんの行動は間違っていないと思いますよ」
「ま、俺は単純な奴だしな」
「いえ、そういう訳じゃなくてっ・・・。
私は今元親さんの心配される状態というのが予想できないですから」
兄弟だとかそういう深いところまで知れているんだろう。
私が知らなくてもいい話かもしれないし、知る必要はないとはっきり言われる話かもしれない。
だから、私からは内容を聞くまで踏み込むことはできなかった。
ただ拒まれるのが怖かった。
「なあ、12月12日・・・暇か?」
「えーっと・・・確か休日でしたから時間はありますけど」
「その日に親泰が来んだ、だからちょっくら付き合ってくれねえか?
もし良かったらでいいんだがよ」
「大丈夫です!」
私は本当に都合よくできてると思う。
今きっと凄く笑顔だ。
さっきまで拒まれたらどうしようとか考えていたからか、今こうやって元親さんが私を求めようとー・・・いや、求められている訳じゃないかもしれない。
それでも、こうやって私を呼んでくれるだけで凄く嬉しいと思ってしまう。
自分の表情に気付いた途端顔を伏せたけど・・・。
元親さんもちょっと不思議に思ったかもしれないけどこれ以上何かを聞こうとはしなかった。
「ありがとな、名前ちゃん」
「・・・いえいえっ。
でも12日は私もいても大丈夫なんですか?」
「ああ、俺としては名前ちゃんがいた方がいいな・・・親泰もいるし。
あいつ俺と二人だととことん俺を追い詰めるからな」
「そうですか」
12日までにとりあえず心を落ちつけよう。
そして、元親さんに私がいて良かったとまではいかないけど、迷惑を掛けないようには頑張ろうと思った。
そして、私自体一度冷静に元親さんについての気持ちを考えてみようと思った。
残り2か月を切った、その時までに。
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