第三十二話

時間は流れた。
時間だけは流れた。

なのに、元親さんとは何もないままだった。



9月に元親さんに年下の女の子に興味を持つのかを聞いて、早2か月が経とうとしている。
もう10月も終わろうとしているのだから、肌寒さにも納得がいく。
時間は流れても元親さんとまともに話してもなかった。

理由は・・・まあ積極性のなさだとは思う。
せっかくだからと盛り上がってる部活に入り、そこから練習が厳しいのは当たり前で今は今年度の大会を終えたところだった。
勿論、夏休みのように元親さんと遊べるんでもらえる訳でもなくただただ本当に時間だけが流れた。
練習疲れて家に帰ってすぐ寝てしまう私は元親さんに会うための体力は残っていなかったんだと考えたらすぐにわかる事実に乙女失格だと思う。

それでも大会は一通り終わったから、これからは会えるチャンスはあるかと・・・今は開き直しかない。
それにあるだろうと信じてる。
そう一人で考えて帰路を一人で歩いてた時だった。

「名前ちゃん、よお!」

肩に何かかかったと思えば、それは見るからに男性の背広で。
声の主が元親さんだとわかると背広は元親さんのだとわかった。

「元親さん、こんばんは・・・えと、この背広・・・・・・」
「見るからに寒そうだからな、まあちょっとぐらえあったほうがあったけえだろ」
「もう秋ですもんね・・・ありがとうございます」
「おうよ」

そういや、ここで元親さんにあの質問をしたんだと思うと今更ながら込み上げてくる笑いというものがある。
私は元親さんの背広をぎゅっと握って笑いを堪えようとしたんだけど、不覚にも少し笑いがこぼれてしまった。

「どうした?」
「い、いえ・・・ちょっとここでした質問思い出してしまって」
「ああ、あの俺がロリコンかっていうやつか・・・はっはっは、ほんと何であんな質問されたんだろうな」
「今更ながら申し訳ないですね」
「気にしてねえから、大丈夫だ」

もしもあの時元親さんに俺はロリコンだとか言われてたら私どうしただろうね・・・。
とりあえず雑賀先生に電話するかもしれなかったね。
あと親泰さんの言葉の続きが気になったりもした。



「時間だけが過ぎて行きますよね」
「そうだな、夏遊んだのだって随分前に感じちまうからな・・・。
 親泰にもろくに会ってねえしな」
「親泰さんに会いたいんですけどねえ・・・なかなか会えないもんですね」
「ち、親泰にか!?」

あの電話の続き聞けることなら聞きたいなとか思ってたら親泰さんの言葉に反応した元親さん。
やっぱり兄弟だと気になるものなのかなとか思うと微笑ましくなった。

しかし、理由は違うかったらしい。
元親さんの冷や汗と思われるものが大変なことになってるし、ただ今元親さんは私の肩を強く掴んでるし。


「親泰に、会いにいきてえのか・・・?
 もしかして惚れちまったんじゃ・・・・・・」
「元親さん、落ち着いてください!
 私別に親泰さんに恋愛感情持ってませんよ!?」

むしろ持ってるのは元親さんの方ですから・・・
ほんとにどれだけ言いたいことか。

「ほ、ほんとか?」
「そんな一回しか会った事がない人ですよ。
 それに会った時は私は元親さんの彼女役だけでドキドキして大変だったんですよ、どこに恋愛できる余裕があるんですか・・・」
「そうか、良かった」
「へ、良かった・・・?」

元親さんは冷静な状態に戻ったけど、私には元親さんの「良かった」という言葉にひっかかったまま。
もう一人で気にしすぎだっていうことはわかってる。

だけど、仕方ないよ。
うん、是非も無し・・・。



  


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