第三十一話

鶴姫ちゃんと雑賀先生に相談にもらって、その後仮入部をしていたらいつの間にか空が暗くなってきてる。

「もうこんな時間か・・・」

少し涼しい風が吹いて私は高知にいるんだなという感覚が出てきた気がした。
前いたところのほうが涼しかった訳だけど・・・何でだろう。
たぶん、季節が巡ってると感じられたから。
はっきりとわからないけどきっと単純な理由だろう。

とにかく今日元親さんに聞けたらなと思って足を速めた。
しばらく歩いていると前に見覚えのある後ろ姿が映った。

「元親さんっ!」
「お、おう名前ちゃんじゃねえか!こんばんは」
「こ、こんばんわ、はあはあ」

いきなり走ったからなのか私の動機は酷かった。
もう心臓がときめかない方の意味でバクバクだった。

「ほら深呼吸でもしろって、な?」
「あ、はい」

それで本日何回目かわからない深呼吸をした。
呼吸も落ち着いてきたところで元親さんに聞きたいことを聞こうと思った

「あの、元親さん」
「ん?」
「元親さんは小さい女の子にしー・・・」

思ったけど、質問の意味を良く考えてみる。
さっき凄く誤解された質問だ。
これを本人の前でするのはどうなんだろうかと不安になってくる。

「遠慮すんなって、ちゃんと言ってみろ」
「いえ、誤解を受けそうですから」
「大丈夫だ、まだ冷静に考えられる頭は残ってっからよ」
「ほんとですね?」
「おうっ!」

元気よく答えた元親さん。
誤解しないって言ったし、大丈夫かな。
そう思って恐る恐る質問をしてみた。

元親さんは小さい女の子に下心を持ちますか、と。

その結果が今の元親さん。
思いっきり咽ている。

「大丈夫ですかっ!?」
「そりゃいきなりんなこと聞かれるなんて思ってもなかったぞ。
 どうしたんだよ」
「親泰さん、元就さん、雑賀先生・・・この三人に似たようなこと言われまして」

”元親さんが私に手を出す”
そんな言葉。
自分からはさすがに言えなかったけど元親さんはわかったようで、どこかで納得していた。
雑賀先生に関しては私に携帯の電話番号を渡すぐらいだ。

「俺はまあ・・・好きな女にしか手出さねえからよ。
 それに相手が好きでも拒まれて無理にいろいろさせることはねえよ」

なんとかロリコン疑惑は取れたみたいだ。

「じゃあ安心ですね、というか親泰さんは私の年齢わかってたんですかね?」
「あー・・・あいつはどうだろうな?
 はっきり14歳だとかはわかっちゃいねえと思うが」

それなら親泰さんどうしてだろうとか思ってしまったけど。
そういや親泰さんと言えば電話で話して以来だと思う。
確かあの時途中で途切れてしまったんだよね。

「親泰さんお元気ですかね?」
「ああ、元気にやってんぞ。
 それにしてもいきなりどうしたんだ?」
「え、えっと・・・し、思春期の至りです!!」

これは間違ってはいないよね。
恋愛感情持ってるとしてもこれは思春期特有のなんたらこうたらでしょ。

「思春期かー、乙女心とか言うと思ってたけどな」
「もし私に告白されたら困ったことになりますよ」
「だから、言っといただろうが」
「へ?」

私の頭に手を乗せガシガシと撫でた。
髪型がごちゃごちゃになってはしまうが、そんなことは一瞬のうちにどうでもよくなった。


「はっ、俺は好きな奴なら関係なく手出すからな!」


元親さんの豪快な笑みに心奪われて・・・
ほんとにこういう時のことを心奪われるって言うんだなって実感するほど私の元親さんへの気持ちが大きくなった。

きっと私は今元親さんに彼女ができたら素直に祝福できないと思う。
何日も何か月もかかって、元親さんを祝福するんだと思う。
今の私に相手を祝福できる自信は皆無だった。




  


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