第三十話

「鶴ちゃん、もしかして私が元親さんのことどう思ってるかわかってた?」
「私には何でも御見通しですよ!」

さすが鶴ちゃんと言いたいところだけどなんとなくいろんな事情があるんだろうなということが伺える。
それにしても元親さんのことどうしようか。
今はただのお隣さんとしか関係が持ててないし。

「名前さん、孫市姉さまの所に行きますよ!」
「え、雑賀先生のところにって、え?」

鶴ちゃんが廊下を私を引っ張りながら走り、私もそのスピードに合わせて付いていく。
しばらく走って階段も降りたところで職員室に付いた。
そしてドアを開けようとしたとたん、雑賀先生が出てきた。

「孫市姉さま!」
「姫、どうした?
 ・・・あれ石谷も一緒か」
「はい、どうも」
「姉様!
 海賊さんのことで話があります」

雑賀先生は少し私を見て一つ溜息をついてから鶴姫ちゃんに向き直った。

「わかった、だが私があいつとそんなに関わりがあるわけではないぞ。
 いいな、石谷?」
「え、あ、はいっ」

もう私が聞きに来たのだとわかってたんだろう。
雑賀先生は場所を移すぞ、と言うと中庭まで私たちを連れて行った。




「それで元親の事か・・・」
「ほら名前さんっ」

鶴姫ちゃんは私の背を少し押して笑顔を見せた。
これは自分から聞きたいことは聞けと言うことなんだろう。

「元親さんは・・・」

聞きたいことろくに考えてもなかったなと少し焦る。
そして今までのことを思い出してみて・・・
そういや親泰さんとか元就さんにいろいろ心配されたことあったなとか思い出してみて・・・

「元親さんはだいたい小さい女の子になら興味を持つんですか・・・?」
『っ!?』

あ、よく考えてみればこれ元親さんがロリコンですかって聞いたことになる。
それは二人の表情が証拠になっている。
普段冷静な雑賀先生までも驚いたような顔をしてるからこれは大変なことをくちばしちゃったなと反省する。

「すいません、ちょっと言葉が。
 えと、元親さん小さい女の子に・・・その、し、下心を持つのかな、と」
「いやいや、言葉がさらにひどいぞ」
「えー、もう言葉にできません・・・」
「とりあえず落ち着いてください!」
「そうだ、とにかく落ち着け!」

深呼吸をしろと二人に言われ、とりあえず言われたとおりにして顔を上げる。

「とりあえずさっきのことはどこからきた?」
「元親さんの弟さんの親泰さんと毛利元就さんと言う方・・・知ってますかね?
 その二人に元親さんに気を付けろと言われまして・・・」
「そうか。
 ちなみに昨日届けた筆箱の中に元親と何かあったときのために私の連絡先を入れておいた」

あとで見てみます、と軽くお礼を言ってみたもののこれは感謝すべきことなのかと一瞬わからなくなった。
元親さんの扱いがこれじゃロリコンだよ。
私は別に童顔じゃないしむしろ年齢相応より上に見られることが多い。
でも結局は14歳。

「海賊さんに直接聞いた方がはやくないですか?」

その鶴姫ちゃんの一言で雑賀先生と私は同時に頷いた。
そうだね、無駄な悪評を広めるよりいいもんね。

「今日聞いてみるね、ありがとうございました鶴姫ちゃん、雑賀先生」
「結局は何もしてませんから」
「同じくだ」

どうしてかその二人の笑顔が夢に出てくる鶴姫ちゃんと孫市ちゃんに凄く重なった。
もうデジャブとか言う気は無いけれど今となっては無視をしておいた。
いつかわかると信じて。




  


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