第二十六話

『名前、いつまで元親を待ってるんだ』

雨の中私は元親が通るであろう道で傘をさして待っていた。
そんな私に呆れたのが雑賀先生に似た孫市ちゃんだった。

『だって元親様は傘も持たずに出てお行きになって・・・』
『名前さーん、もうすぐで海賊さん来ますよ』
『あ、鶴姫ちゃんっ、ごめんなさい私なんかのために』
『名前さんがあの海賊さんに恋をしているのはわからないですけど恋をすること自体の気持ちはわかりますから☆
 ・・・ああ、私もいつか宵闇の羽の方と、きゃっ』
『姫、落ち着け』
『まあまあ孫市ちゃん。
 これでも私だって元親と一緒にいられる二人が羨ましくていつも一緒にいられると考えただけでもう”きゃっ”とかどころに収まりません』

二人にとっては意外なことだったのか、同時に笑われてしまった。
普段の私の性格を考えられるとそうなんだろう。

『でもそんな風に想われてる元親は幸せだな』
『そうですよ! 
 あの海賊さんに名前さんは勿体無さすぎです!!』
『そんなことありません!
 私にとっては元親様が勿体無さすぎで仕方がありませんよ、元親様はこの世で一番の殿方です!!』


『んなこと思ってたなんてな、ありがとな名前』
『も、元親様、いつの間にっ』
『名前もそのようにこやつを甘やかす出ないわ』

いつの間にか背後に回ってきたのは元親。
横には毛利元就という安芸の大名までいる。

横を見ると二人は元就を邪魔だと言っている。
でも私は二人となると恥ずかしいからいいんだけど。
それでも二人じゃなくたってこんなことをするのは恥ずかしいと訴えるように私の頬は熱くなる。

『元親様、傘どうぞ』
『ありがとな、でも・・・サヤカも鶴の字も傘ねえんだろ?』

元親は二人に向かって傘を放った。
それを掴んだ孫市ちゃん。

『たまにはいいだろ?』

そう言った元親は私から傘を取り、肩を寄せて二人で一つの傘に入った。
今考えると相合傘だ。

『でも濡れてしまいます』

既に歩き出した時点で、私は無事だけど元親の袖は濡れていて肌が軽く透けている。
腕の形もはっきりと出だしている。

『いいじゃねえか、雨の日なんだから』
『傘の意味もないですし・・・何より恥ずかしいです』
『可愛いこと言ってくれるなよな』
『可愛いくないです』
『ははっ、まあそんなとこも好きだけどな』
『元親様・・・好きです』

「好きです」


夢の中の意識ではない自分が元親に好きだと言った。
目が覚める瞬間だった。
鶴姫ちゃんと雑賀先生と似てる鶴姫ちゃんと孫市ちゃんが出てきたのは何故だろう。
あと毛利元就・・・。
もしかして私会ってしまうのかな、なんて思ってしまった秋口だった。




  


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