第二十四話

一日の学校も終わり、帰る用意をしていると雑賀先生に呼び止められた。

「石谷、面倒なことが残っていてな。
 今日ちょっと残れるか?」
「はい、大丈夫です」
「なら良かった。
 ほらお前らすぐに下校しろ」

教室に残っていた生徒への下校を促し、いつしか教室の中は雑賀先生と私だけになった。
さっきの盛り上がりもどこにいったんだろうと思うほどの静けさだけが残っていた。

「それで面倒なことって何ですか?」
「あの恒例の教育相談なんだが、石谷は夏からだからな終わってないだろ」

教育相談・・・。
そうだ、前の学校でもあったっけ?
今更な話だけど転校してきたから仕方ないか、そう思って席に着いた雑賀先生の向かいに私も座った。

「いきなりで悪いんだが始めさせてもらうぞ」
「はい、お願いします」
「えっとな、そういやこの住所だと私の家から近いな。
 此処だったら近所に長曾我部とかいるんじゃないか?」

長曾我部って言ったら元親さんのことだろう。
長曾我部なんて名字なかなかいないと思うし、元親さんだと考えるのが妥当だろう。

「はい、お隣さんです」
「・・・元親って言う奴か?」
「元親さんですよ」
「それはもう・・・凄い偶然としか言いようがないな」
「え、偶然ですか?」

朝の鶴姫ちゃんが言ったように私何かあるんだろうか?
何がかはよくわからないが不思議になる。

「元親からは何も聞いていないのか、石谷自身のこととか?」
「私自身・・・ですか?」
「知らないなら時機に気づくだろう、まあ大した話でもないしな。
 なら話変わって勉強とかの話になるがー・・・」


そこから先の話は何だかよく頭に入ってこなかった。
鶴姫ちゃんも雑賀先生も、そして元親さんも。
私に何かを隠してる?

私は私なのにわからないことがある・・・私なのに。
自身のことがわからないなんてどうなってるんだろうね。
教育相談が終わると何かがはっきりしないまま私は帰路についた。



//////////



家に帰って、庭で涼をとっていると隣から元親さんの声が聞こえた。

『おい、サヤカ。サヤカが何で俺ん家来てんだよ』
『間違えただけだ、私は石谷の家に行こうとしてただけだ』
『それは隣の家だぞ、ったく・・・名前に用か?』
『心配するな、ただの学校関係だ。じゃあな』
『ちょ、待てよっ』

何だか口論してるように聞こえるけど・・・。
とりあえず二人なんか仲は良さそうな気はしてくる。
それはそうと雑賀先生が家に来ようとしてるなんてだいぶ不意打ちだから焦った。
私は急いで玄関の前に回った。

「雑賀先生」
「石谷、聞こえてたかさっきの話が。
 ・・・これ忘れ物だ」

そう言って鞄から取り出したのは私の手提げ鞄だった。

「すいません、わざわざ手間を取らせてしまって」
「いや、家は近いからついでだ」
「ありがとうございます」
「ああ、じゃあまた明日な」

雑賀先生は後ろ手で手を振って帰っていった。
かっこいいな、とか思いながら私は隣の門から元親さんがいるかどうかを確認してみた。
すると目が合い、反射的に逸らしてしまった。

「名前ちゃん、こんばんは」
「こ、こんばんわ・・・。
 あ、あの元親さん!」
「ん?」
「今其方にいってもいいですか・・・?」
「・・・ああ、来いよ!」

一瞬何かを考えた元親さんはすぐに私に向き直って手招きをした。
私はただそれにしたがって門を開くだけだった。






  


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