第二十一話

家に帰ってしばらくすると両親が帰宅した。

「ただいまー」
「おかえりなさーい」
「何か変わったこととかなかったか?」
「うん、元親さんにお世話になったから」

玄関入るなり荷物も持ったままで聞いてる私の両親はどれだけ心配性なことだか。
それは私も人のことを言えやしないんだけど。

「またお礼を言いに行かないとね」
「ああ、お土産買ってきたからな」

そう言って鞄からお菓子の包みを取り出した父さん。
リビングに入るのはあともう少し先。
私たち3人は入ればいいという概念から数分離れていた。

リビングに入った後、両親の荷物の片づけを手伝って元親さんの家へもう一度訪ねた。
さっきのことを少し思い出してしまい、私の顔は軽く温まった。

「隣の石谷です」
『はいはいー』

母さんがインターホンで挨拶すると元親さんの声が聞こえてきた。
しばらくして、元親さんが顔出した。

「どうも、休みの日もお疲れ様でした」
「いえいえ、こちらこそ名前を預かってもらって本当にありがとうございました。
 これ出張先の名物だったから」

そう言って持っていたお菓子の包みを元親さんに手渡した。
戸惑いながらも受け取った元親さんはなんだか嬉しそうだった。
そんなところに可愛いなとか思ってしまう私がいた。
・・・いや、これはギャップ萌えとかそういう系のことだから。
だから、仕方ないの。

私は誰に向かって必死になってるんだろうと、少し素朴な疑問が出てきたので元親さんにまたお礼を言った。

「本当にお世話になりました」
「いやいや、俺だって名前といられて楽しかったからな」
「私だってたー・・・」

楽しかったです、そう言おうとしたところで。
母さんの声が入ってきた。

「あらいつの間にかそんなに距離縮めちゃったのね、呼び捨てに名ちゃって」
『っ!』

私はもう呼び捨てで呼ばれるのもちゃん付けで呼ばれるのも両方あったから慣れてきたところだから今更何か恥ずかしがることは無いんだけど、その距離縮まったとか、呼び捨てで呼ばされることを思い出してそのことで少し恥ずかしくなってしまった。

「あ、その・・・すいません」

元親さんも母さんの前でさすがに呼び捨てはまずいと思ったのか謝る始末。
お礼に来たのに謝られるとはまさか思わず、遂には母さんまで慌ててしまった。

「違う、違うのっ、名前も此処に馴染めてきたかなって思って嬉しかっただけなの」
「そう、ですか・・・そうですね。
 名前ちゃん、馴染んできたか?」
「あ、はい、御陰様で・・・」

言葉もろくに紡ぐことはできなかったけれど言わんとしていることはわかったんだろう。
元親さんが笑って私の頭をくしゃりと撫でた。

「これからも仲良くしてやってね」
「勿論です、こちらこそよろしくお願いします」


母さんには敬語。
私には親しみやすい言葉。

使い分けてる元親さんが私には何だか格好よく映った。
いつも格好いいんだけど・・・やっぱりギャップかな?

それにしても、触れられた頭がなんだか熱くなってきた気がした。
体調が悪いのか、恥ずかしかったのか・・・私にはどちらなのかはわからなかった。






  


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