第十九話

「名前ー?」
「・・・元親様・・・・・・っ、え!?元親さん?」
「お、おうおはようさん」
「おはようございます、ごめんなさいっ、寝ぼけてました」

私を起こしに来たのであろう元親さんの声が夢の延長となってしまった結果、私は寝ぼけて夢通りに「元親様」と呼んでしまった。
我ながらなんという恥ずかしいことをしてしまったんだろう。
元親さんも苦笑してる分、逆に辛い。


「気にしてねえから。あ、もう朝飯にすっから着替えて来いよ」
「あ、はい、わかりましたっ」

元親さんが私を気遣って出て行くが、もうその心遣いから何とも言えない気持ちになってくる。
変な子って思われたかな。
・・・今までいい感じでご近所づきあいできたのに、ついにやってしまったよ。
気分はもう最悪だ。

そんなこんなで気分最悪な状態で着替えてた訳だけど。


「ん?」


ふと鏡に映った首が気になった。
赤くなってる・・・。
蚊に刺されたと思ったけど珍しいことにかゆみが無いので違うんだと判断する。
よく見れば痣っぽいけど、所詮頑張っても首にあるために何かはわからない。
まあ、元親さんに聞いたらいいかー、そう楽観的に考えて着替えを終えた私は居間へと足を運んだ。




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お待たせしました、そう言いながら居間に入るといい匂いがした。
ちゃぶ台には似合わず、トーストにサラダスクランブルエッグ・・・と朝飯と言うよりもブレックファーストと言えるものが並んでいた。

「すごいです、これ全部作ったんですか?」
「ああ、無難なところで作ってみたんだが大丈夫か?」
「そんなっ、凄く美味しそうですよっ!!」
「そうか、そりゃ良かった。
 ほら早く座りな」
「はいっ」

その場に座って元親さんと朝ごはんをいただいた。
どれも何気ない定番なものだが、おいしさが半端なかった。
昨日同様どれもおいしかった。



食べ終わり一服ついて、思い出したことを話してみた。

「元親さん、私昨日首を何処かにぶつけてたとかってわかりますかね?」
「え、首って・・・っ」

何故か気まずそうに私を見る元親さん。
もしかして、私変なぶつけ方でもしちゃったのかな。

「えと、元親さん?」
「あ、ああ、痣だからなとりあえず湿布でもしとくか・・・」

取ってくると言って立ち上がった元親さんを見てまた申し訳ないと思ってしまう。
何だかんだで本当に元親さんを頼りすぎだ。


戻ってきた元親さんは私の首筋に湿布を張ってくれた。
ひにゃりと冷たい感覚が私を襲った。

「ありがとうございます」
「おう、悪かったな、痣付けさせちまって」
「そんな私がきっとどこかにぶつけちゃったんですから、元親さんが謝る必要は無いじゃないですか。
 それに私はさんざんお世話になってますから」

何故か暗い顔だった元親さんもやっと笑った。
まるでもう事実は仕方ないというように。
私に意図はわからない。
それでも、元親さんが笑うだけで私は満足だった。








  


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