第十八話
静かに月を見ていたら眠くなってきてしまい、私はあくびをした。
「もう眠たくなってきたか?」
「はい・・・」
「もう寝るか?」
「・・・でも、もうちょっと此処にいたい気もしてて、いいですか?」
「あったりめえよ、気の済むまでいたらいい。
何なら俺に凭れておきな」
そう言って元親さんは私の体を寄せた。
悪いとは思っておきながらも元親さんの体温の心地よさという誘惑に負けてしまいそうで、結果的に負けた。
筋肉があるとあったかいっていうのは本当だったんだね。
「ふあー・・・」
「もう寝てしまいな、おやすみ名前」
元親さんの声が私の眠気を誘うのに十分なほど柔らかな声で。
私は睡魔との戦いに負けた。
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『元親様・・・』
夢の中だからか私は着物を着ていた。
そして、目の前には元親がいた。
冷静になりながらも、夢の中で意識を持っていることに驚いた。
『名前、どうした?』
私の方を見てにかっと笑う元親につい口をつぐんでしまう。
でも、どうしても・・・たとえ夢の中だとしても聞いておきたいことがあった。
『元親様は元親さんなんですか?』
『・・・ん?どういうこったあ、それは』
『いえ、やっぱり私の思い違いですね。
元親様、私は生まれ変わったとしてもきっと貴方のことが好きになります』
『嬉しいこと言ってくれるじゃねえか、なら俺もこのまま生まれ変わってやる。
その方が見つけやすいだろ?』
そうですね、そう言って笑う私自身を懐かしく感じる。
これは一体何時のことなんだろう。
”もし俺はお前さんを好きだと言えない立場に生まれちまったら今度はお前さんから俺に好きだと言ってくれ”
少し不安そうに笑った元親は私をぎゅっと抱きしめた。
そうだ。
来世に絶対なんかない。
増してや来世さえもあるのかさえわからないことだ。
それでも、私は元親が好きだと思う。
逢えますようにと願ってしまう。
でも、願うだけならいいじゃないか。
夢見るだけならいいじゃないか。
好きで好きで仕方ないのだから。
胸の想いを抑え込んで名前を呼ぶだけなら許されることでしょ?
「元親様」
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