第零話
『初にお目にかかります、元親様。
私斉藤利三の妹、名前と申しまする』
『お前さんがか・・・。
俺たちはもう夫婦だ、そう固くなんなって』
『え、でもー』
『でも、じゃねぇ。たとえ歳が11違ったてな、俺の嫁だ。
お前だけを愛することを誓う、−だから俺にお前さんの人生安心して預けてくれ』
『土佐は鬼の住処と聞きます』
『鬼か?俺は会ったことがねぇな。だが・・・』
『だがー?』
『俺は鬼だ、お前さんを喰らう鬼だ』
『も、元親様っ!?---っ!!』
『名前、愛してる。
・・・俺の名を呼べ、元親って言ってくれ』
『元親っ・・・』
『たとえ成り下がっちまった俺でもお前さんはずっとそばにいてくれるか?』
『私は貴方様に何処まででも付いていきますとも。
御無理をなさらないでくださいませ、私にも貴方様の御心を支えさせてくださいな』
『・・・名前、名前ー、俺はお前をこの世で一番ー・・・・・・』
『おい、名前っ!しっかりしろ、お前さんは俺にずっと付いてくるって言っただろうが!』
『・・・元親様、先に逝く私をお許しくださいませ・・・』
『な、縁起でもねぇこと言うんじゃねぇよ!
もっと生きろ!!』
『生まれ変わってもまた、貴方様にお会いしたいです。
・・・元親様、貴方様にお会いできて・・貴方様を愛することができて、愛されて本当に幸せでした。
貴方様の御武運を願い続けておりまー、す』
『おい・・・名前、おいっ!
名前ーーーーーーーーーーーっ!!』
「またこの夢か・・・」
小さいころからずっと見ている夢がある。
私がどこかの御姫様で、長曾我部元親という人に恋をする夢。
どうしてなんだろう、この夢を見るたびに胸がひどく痛む。苦しくなる。
歳が上がるにつれて内容がはっきりしようとしてくるものだから何時しか私は恋愛に恐れを抱くようになった。
”元親”に夢の中で愛を誓った私。
この”元親”はおそらく戦国大名の”長曾我部元親”なのだろう。
見たこともないし、増してや会ったこともない。
でも、夢って自分が一番思ってることが出るっていう。、
なのに、何でよく知らない、そんな人をどうしてここまで思ってるんだろう?
私にはわからない。
これまでわからないのだから、きっとこれからもわからないのだろう。
一時期この人を調べたことがあった。
でも、どうも夢に出てくる姿は史実と全然違う。
だから、不思議に思ったりもする。
ま、何か関係あるか、って聞かれたらないんだけどさ。
どうせ、私の夢で終わるのだから、
関係ないか・・・。
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