第十四話

親泰さんの家に戻ってから浴衣から元の服に着替え、帰る用意を整えた。

「親泰さんありがとうございました」
「助かったぜ、親泰。
 ・・・ああ、こいつは絶対に渡さねえからな」

そう言って私を抱き寄せる元親さん。
もう恋人同士に見えるかわからないほど私の反応は普通のものではなかった。
普通のカップルって何であんなに何もないように抱きついたりできるのかな・・・。
私はもう恥ずかしすぎてもう無理です。

限界だから、やめて、マジで、頼みます、やめて、離して・・・・・・・っ
ひたすら離してくれるよう祈り、やっとのことで元親さんが離してくれて見えた親泰さんの顔は苦笑だった。

「心配すんなって、今回は兄貴がそんだけ本気になってんだ。
 弟としては一応喜ばしいことだからな。
 ・・・名前さん、こいつは馬鹿だけど「おい、馬鹿って、おま」・・根はいい奴なんでよろしくしてやってください」
「あ、はいっ」

元親さんが何かを言おうとしてたけど親泰さんは適当にあしらっていた。
兄弟ってこういうところ見てたらいいなーって思った。

「じゃあそろそろ帰るか」
「本当にありがとうございました」
「じゃあ名前さん気を付けて、・・・兄貴はまあ死んでも死にきれないような奴だから心配はいらないか。
 でも、ちゃんと安全運転しろよ」
「わーってるわっ!ったく、相変わらずな奴だな。
 まあ世話になった、じゃあな」

私の荷物を取って元親さんは一歩先を歩いて家を出た。
私もその後を追って親泰さんに一礼してから家を出た。

家を一歩出るだけで蒸したような空気が流れていた。

「やっぱり暑いなー、さて帰るか」
「はい」


セダンに乗り込み、行きの道を辿っていく私たちだった。
そして、海を見るたびに何とも言えない感情に心が埋め尽くされる私だった。






  


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