第十三話

元親さんを少し恨めしそうに見てた訳だけど、本人気づいたらしく振り向いたので瞬間に目を逸らした。
その行動に不信を感じたのか、そして覗き込まれてしまった。
今でも距離が近いのに更に距離は縮まった。

「どうしたんだよ?」
「別に何もないですよー?」
「ふーん、なら俺に何をされてもいいってことか?」

何を何をするおつもりですか!?
顔は笑ってるだけだから何も推測できない。
悪い予感さえしてくる・・・。

「・・・ほんとに今日一緒にいるのが私で良かったのかなって」
「どういうこった?」

元親さんはそりゃどっからどう見ても顔のレベルが高い。
その上性格だってアニキ肌で、男女問わず憧れるガラだ。
モテないわけがないし、相手の宛は何処にでもいると見える。

「私が本当に贅沢ものだなーって思っちゃいまして・・・」
「・・・あー、もしかして俺が言ってることとか、今日お前さんと来たこととか全部気持ち偽ってやってるとか思ってんのか?
 なら、それは間違いだ、俺は自分の気持ち優先してばっかだし、今日お前さんと行きたいって思ってたのも事実だ」
「ーっ!!」

そうか、もう元親さんのは恋愛経験の豊富さ抜いてもきっと元からこんな人なんだ。
天然で人を喜ばすこともできる人なんだ。
天衣無縫、と表せる人・・・。
誰にでも言ってるんだろうなとわかっても、いざ言われてみると凄く恥ずかしかった。


「・・・・・・ありがとうございます」
「お、最後だ」

元親さんが言ったとたんに夜空に最後の大輪が咲いた。
瞬間に手を繋がれた手は温かかった。






「どうだった?」
「凄く綺麗でした!!」
「そりゃ良かった」

元親さんは嬉しそうに笑った。
その笑顔に連られて私も笑った。

「今から帰るんですね・・・」

目の前のける人で溢れている道を見ると花火は終わったんだという実感が更にくるので何だか少し寂しいような感じになってしまう。
ああ、綺麗だったな。


「なあ人だかりがましになるまで残らねえか?
 どうせ親泰のところは近いんだ、ゆっくり帰ろうぜ」
「いいんですか?」
「俺も物足りねえと思ってたところだ」

繋がれたままの手を引かれて人通りが少ない道に出た。
先程の喧騒は皆無だ。
波の音だけがする。

「ここから見る夕日は凄く綺麗なんだけど見せらんなかったな」
「夕日は見れませんでしたが、月が凄く綺麗ですよ」
「そうだな」

そっと頭を撫でた元親さんの手が懐かしいような感じがして何故か涙が出てきた。
拭っても拭っても止まらない。

「ど、どうした?大丈夫かっ!?」
「ご、ごめんなさ、いっ、大丈夫っ・・・」
「無理すんなって、な?」

手が離れたと思ったら、涙を拭われていて申し訳なくなる。
というか、自分が本当に困った子供だと思う。
ここまで連れて来てもらった上に、理由がわからないまま泣いて慰められる・・・なんてトラブルメーカーだ。


落ち着いてきてから、深く息を吸い込んだ。

「もう大丈夫です、御心配お掛けしました」
「大丈夫か?」
「大丈夫です、ほんと、どうしたのかわかりませんで・・・」
「辛いときには泣いて良いんだ、でも泣くときには一人で泣くんじゃねえぞ。
 何だったらいつでも俺のところに来いよ?」

どんと胸を叩いた元親さん。
きっと私の中で夢の中の元親に知らず知らずのうちに重ねたりもしたんだろう。
懐かしさを感じたのもそのせいだ。
私は何処を見ているんだろう・・・。



「帰るか」

再び手を引かれて岐路に立つ。


お願いだから、落ち着いて私の心。

ここにいるのは私の家の隣の長曾我部元親さんだ。
決して夢の中の元親じゃないんだよ。






  


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