第十一話

客間へ通されると元親さんと親泰さんはどこかへ行ってしまったので私は一人、出されたお茶を啜っていた。

ゆっくり飲んでいたけれどもうなくなりそうだという時に二人が帰ってきた。
元親さんが持っているのは、紺の生地に淡い色の花柄が描かれた女性用の着物だった。

「名前、これな。
 俺も向こうで着替えてくるから此処で着替えてくれ、っし、行くぞ親泰」
「はいはい・・・」

少し高めのテンションな元親さんに少し呆れ気味の親泰さん。
男同士だとここまで差が出るんだと思うと兄弟っていいなって羨ましくもなってしまう。
たぶん私とお兄ちゃんは基本的に似ているところが多いため、その分も。




何とか苦戦しながらも着替え終わり、部屋の外をちらりと見てみるとすでに元親さんと親泰さんがいた。

「すいません、お待たせしてしまったみたいでっ」
「気にすんなってこっちも今終わったところだからよー・・・・・・・・・」

何故か言葉が言い終わらないうちに黙ってしまった元親さん。
疑問に思うのと元親さんの浴衣の似合い度が高くて、私も黙ってしまうから沈黙が流れた。


・・・格好いいし、だいたいの服なら何でも似合うとは思ってたけども。
浴衣ぐらい何のそのー、みたいな人だとは思ってたけども。
・・・・・・やばい、格好良すぎるよ。
元親さん、え?
私今からどんだけ周りから疎まれたらいいんだろう。
でも、そんなこと気にならないくらいに幸せだと思う。




「こほんっ!」


何処かへ飛んでいきそうな私の精神を戻したのは親泰さんの咳払いだった。
瞬間に我に返った。

「時間もないんだから。
 兄貴、言うこと言って早く行けよ」
「おお、おうっ」

親泰さんが元親さんの頭をスパッと叩き、ハッとした元親さんが私に向き直った。

「すげえ似合ってる・・・」
「え、あ、あ、はいっ、あ、あう・・・」

まさか言うことが私を褒めることだとは思わなくて戸惑って変な声ばかり出てしまった。
お世辞だってわかってても、咄嗟に言われると反応らしい反応もできなかった。
とりあえず、落ち着かせて何も無かったように取り繕った。

「・・・元親も、いつもと雰囲気違ってるけど凄く格好良いでー、格好良い!」
「ははっ、そうか、ありがとな」

結局は何も無かったようには取り繕いきることはできず、敬語に戻ろうとしてしまったし、顔もきっと赤かったんだろうし、親泰さんには変な奴だとか思われたのかもしれない。
でも、私の言葉が言い終わった瞬間に元親さんが頭を撫でて顔がきっと隠れたから赤いところは見られなかったかもしれない。
うん・・・、見られてなかったと信じてる。


「名前・・・・・・」
「元親・・・・・・・・・?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」

「ごほっ、ごほっ!」
「そ、そろそろ行くかっ!」
「はいっ、親泰さん、ありがとうございましたっ!」
「気を付けて」


改めて親泰さんが元親さんとは違う意味でオーラが凄いと感じた。
それにしても、顔がまだ熱いのはどうしたことだろうね。







  


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