120203(元親)

「俺は外に出とかなきゃなんねぇのかな・・・」


目の前の我が主、長曾我部元親は蔵の中でものすごく落ち込んでた。
笑ってるけど、目が死んでる。
長曾我部軍に入って忍びとして働き、約半年。
こんな殿の顔を見るのは初めてだった。

・・・・・・こりゃ、重症だ。

「殿、先程から何を言っておいでですか。
 鬼とは言え、自称でしかございませんのに」
「な、俺は泣く子も黙る西海の鬼だっ!
 自称じゃねぇ!!」

落ち込んでいたと思ったら、叫んで、それでまた”鬼”と言った言葉に反応してずんと気分が沈んでいらしゃった。

・・・、2月3日節分だ。
うわー、面倒臭くないか?
節分なんか毎年やってくんのに軍の人たちだって気の毒だ。


「殿ー?」
「・・・・・・・・・・・・俺は鬼だ」

うわー。
なんかすごく病んでるよ。

「殿みたいな優しい人が鬼な訳がないじゃないですか!
 だいたいそんなこと気にする鬼が何処にいますか!!
 ・・・−っ!?」

顔を伏してる殿の顔を無礼ながらも上げさせると、そこにはくよくよとした殿の顔はなかった。
それを安心したのも束の間、頭に痛みが走った。

え、押し倒された?

え、何押し倒してんの、この変態?

「ーチッ」

しかも何か怒ってらっしゃるし、怒るも何も私が怒る方だと思うんですけど。
機嫌も悪そうだ。


「と、殿ー?」
「・・・・・・・・・・・・・・・ああん?」
「すいません、すいませんっ!」
「・・・でだよ、何でそんなにお前さん冷静なんだ?
 俺が優しい奴だぁ?違うだろ、お前さんが欲しくてたまらなくて戦場でも欲望のままに喰ってるんだぞ。
 お前さんにはそんな鬼が優しいって言えんのか?」

つまり、私には必死で反抗して欲しかったと?
意地でも殿を押しのけて、八つ裂きにしろと?
・・・そこまでは言ってないかー。



「鬼はうちー」

私は袋に入れていた豆を殿に投げつけた。

「名前?」
「私は長曾我部軍が大好きです、殿のことも大好きです。
 戦場のー・・・は正直個人的には恥ずかしくて嫌ですけど、置いといて此処にいる方々の為なら命を惜しむ気はありませんよ。
 鬼はうち、と言っちゃったんですから私の知ってる殿が戻ってきてくださると嬉しいです」
「名前・・・、悪ぃな、俺・・・−」

その時だった、ガシャンッというまるで鍵が閉まるような音がした。
・・・ような、じゃなくて本当にしまったんじゃ。

「ほんとに”鬼は外”になっちまったな、はっはっは!」
「笑い事じゃないですよっ!?」
「いいんだよ、名前。
 ”鬼はうち”何か言ったんだから、責任とって鬼に喰われてしまえ」
「なっ!」

殿はそう言うなり、いつものように身を私の方へ寄せた。
そして、腕を取り私の唇を強引に奪っていった。




「ほら、いつもみたいに呼んでみろ」
「んぁ、もとち、かさっ・・・」




人間に溺れる鬼もどうかと思うけど、鬼に溺れる人間も人間だ。
何だかんだで、鬼にとっくに食べられちゃってるんだな、そう思った。







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今年も節分がやってきましたね!アニキの日です、アニキのっ!!
もう、悪ふざけして「鬼はーうちっ!」とかやっちゃいました笑
ちなみに友達が言ってたのは「鬼はーう、チカー!!」です←
はい、馬鹿ですね♪!




  


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