誓鐘(ちょっぴり心配性な元親)

12月上旬から12月中旬にかけて神戸で行われれるイルミネーション。
所謂ルミナリエ。

震災の鎮魂のためだと言ってもとっても綺麗な光に自然と恋人達だって集まってきてしまう。それに伴ってジンクスだって出てきてしまう。


『カップルが光の道を通る時に手を離してしまえば別れてしまう』

『しかし鐘を鳴らすまで手を繋いだままだとその愛は永遠に続く』


こんなふうに。

それで手繋いで鐘のところまで行くのは難しそうだなとは思うけれどでも女の子としてはやってみたいと思うのは確かで。
でも相手が相手で…そういうジンクス信じそうな元親だと悪い方を信じてしまいそうできっと断られるんだと思った。
だから生半可な優しさ持って誘っちゃ負けだなと。





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「卑怯じゃねえか」
「なんなの恋人同士なのにデートひとつも楽しんじゃダメなの?」
「…んなこと言ってねえ」


昼間は普通に元町あたりを歩いてウィンドーショッピングをして5時に近づくなり、元親の手をぐっと掴んでルミナリエへ行く列に入っていった。


「やっぱ元親もジンクス知ってたの?」
「そりゃ有名どころだからな」
「へー、本当相変わらず見た目によらず可愛いよね」
「名前は気にならねえのかよ」
「手を離さなければいいんでしょ。離したら離したで毎晩元親の枕元に立つから」


そう言うと可愛くねえなと元親は笑う。
確かに自分でも楽観的すぎるし、ひとつのジンクスに執着しすぎだと思うときもある。だけど、それはやっぱり元親だから。

やっぱり相手が元親だから信じて行きたいなと思った。



「…嫌だった?」
「嫌なわけねえだろ。 
 好きな女に一生一緒にいたいって言われてるようなもんなんだから」
「別にそこまで言ってないよ」
「じゃあ離すか?」


繋がれた手をふっと上げられて思わずぎゅっと力を入れる。
冗談だとわかっていてもひやひやしてしまった。


「意地悪」
「素直になんねえからだろうが」


それは図星すぎるなと思いながらも、むっとなって空いてる方の手で元親の頬をつまむ。すると予想通り冷たいだとか痛いだとか、そんな声が聞こえてちょっとだけ満足感を得る。



「それにしてもやっとだな、何回立ち止まってんだか」
「うん、やっと見えた。本当綺麗だね」
「ここまで来た甲斐もあったな、まあ言っちゃお前さんの方が綺麗だぜ」
「そんな言葉は求めておらぬわ」
「たまにはちゃんと受け止めろよな、照れて思いっきし目逸らしてんの誰だよ」


都合の悪い言葉にはどこ吹く風で、時折耳に届く独特な歌に笑いながら気持ちを落ち着かせる。だけど落ち着かせようにも歌詞が『混雑しておりますので〜』とか『押さないで〜』とかいい声で歌うものだから爆笑してしまい、お腹が痛くなった。


「今度こそ落ち着いたか?」
「うん、でもそうこうしてる内にもうでっかいの見えてるよ」
「今年もまた立派だな…このままじゃ写真撮れねえし、鐘の方行ってみっか」
「いいの?」
「いきなり連れてきたのは名前だからプロポーズはお預けな」
「うん、わかってる…でも嬉しい」



しばらく行列に並んで待つととうとう自分たちの番がやってきた。
最後まで手を離さないでいてくれた元親に改めて好きだという感情が沸く。


「元親、好きだよ、ずっと一緒にいたい」
「やっと素直になったな」



繋いでいる手はそのままに、鐘を二人で鳴らした。





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今年もルミナリエへ行ってまいりました(*^^*)
ジンクス聞いて、書くと断言したので書きました(行ったその日各予定でしたがその日テンションが上がりすぎてて爆睡しました)

この話で元親に綺麗だなとか言わせてますが私としては元親に綺麗だね、可愛いよとか言いまくって真顔で赤面させたいです黙ります





  


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