05

花火に行けなかった・・・・・・。


そんな無念の気持ちを抱き、とぼとぼと歩いていた。
花火が一回行けなかったぐらいでは私はそんな悲しくはならないけど。
実は、この度三回連続で行けなかった。
しかも三回連続で親の都合で。
しかも今回は誘ってもちょっとのそっとではノってくれない半兵衛が誘ってくれたというのに。

「あーあ、ほんと運悪いな」
「健康に生きてるだけで幸せだと僕は思うけどなあ」
「っ!?」

求めてもいない返事が返って来たと驚いて、振り返って見ればそこにいるのは半兵衛だった。

「どうしたの、いきなり?」
「君が珍しくああ、無念・・・みたいな顔して歩いてるから少し気になってね」
「無念って・・・まあ今年せっかく半兵衛が誘ってくれたのに行けなかったからさ。
 ほんとごめんね」

申し訳なさと悔しさがあるのだから本当にとことん私にとっては無念な訳だ。
そんな私を半兵衛はおかしそうに笑った。

「そんな風に残念そうな顔してたら僕以外の男だといろんな誤解を受けちゃうよ。
 君も困ったさんだね」
「だって残念だもん・・・」

いや・・・確かに残念だよ。
でも半兵衛が僕以外ってはっきりと言ったことの方が本当に心の底から残念だよ。
そこは誤解しちゃうよ、ぐらい言ってくれるのを期待してた私はどうしたらいいんだよ。

「じゃあ今度僕の家にでもおいでよ、確かこの前買った花火があるはずだから」
「え、いいの!?
 半兵衛の家で!?」

そんなこと言っても結局は二人きりじゃないんだろうけどね。
大きな期待はせずに浴衣着ていこうかな、とか御土産に何持っていこうかなとかある程度の楽しみを考えていた時だった。
半兵衛から衝撃の言葉が聴こえた。


「ただしその日は帰さないよ。
 朝までずっとずっと僕と一緒だ」

そこで私はもう半兵衛を直視することはできなくなった。
きっと既に私は半兵衛のことが好きだったんだろうね。



  


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