04

「やっぱり降ってきたかー」


幸村殿の使いで城下出た訳だけど、雨が降ってきたためすぐには戻ろうとはせず近くの茶屋で時間を潰した。

別に雨自体は忍びである故に慣れている。
どうってこともない。
だけど、今日は遠まわしに主である幸村殿が私に休暇を与えるのだという。
私には何故そんな遠まわしにするのかはわからないが、佐助がいってるのであるのだからそうなのだろう、納得した。

それにしても、雨が止む様子はなかった。
今は普通の女の格好をしている訳だし、此処は幸村殿の使いでよくくるために私は主人とも仲がいいこともあって何と言うか帰りにくかった。


「今日はお休みなんだね」
「はい、だから今日は幸村殿のお使いじゃないんですけど・・・でも帰りに団子を包んでもらえますか」
「はいはい、あんたも大変だね、休みなのに主を思って」
「まあ主ですからねえ・・・、ですが武田軍のオカンには負けますよ、ははっ」

主人は私におかわりのお茶と団子を持ってきて私と同様に席に着いた。
客が雨のせいか来ていないから大丈夫なのだろう。


「それで、あんたは幸村様が好きなのかい?」
「ぶーっ!!・・・こほっ、ごほっ、な、何を言ってるんですかっ!!?」

主人がいきなり予想も簡単にできないことを言いだすため私はお茶を勢いよく吹き出してしまった。
あーあ、服が・・・。

「それでどうなんだい?」
「べ、別に主ですから・・・まあ嫌いとかじゃないんですけど、どっちかっていうと好きの方よりの・・・−、って言わせないでください、破廉恥ですっ!」
「はっはっは、相変わらずそこの主従関係は似ているね」

恋愛事が苦手なのは私も幸村殿もであるせいだからか、似た者同士と言われるのはよくあることである。
佐助にも飽きられるし・・・。


「好きなんですから仕方がなー」


「団子をくだされえ」



・・・・・・唐突に店に入ってきたのは幸村殿だった。

「な、何故此処に!?」
「帰りに幸村殿に団子でも買って帰ろうかなと」
「それではそなたを休みにさせた意味がないではないか・・・」

肩を落として落ち込んだように見せる幸村殿。
・・・というか、意味がよくわからないんですけど。


「そなたのために団子を買いに来たのに・・・これでは意味がなかった。
 やっぱり俺は何もできぬ主であったな」
「そ、そんなっ、そんな理由で落ち込まないでくださいよっ!
 私は幸村殿が買ってくださろうとしてくださっただけで嬉しいですからっ!!」
「何故?」
「え、何故って・・・」

”好きだから”?
まあそんなことも言えるはずがなく、あたふためいていると幸村殿が主人には見えぬよう私にニヤリと笑いかけた。

そして、近づくなり耳元で囁いた。



『わからぬのであれば、俺が理由をその体に刻み込んでやろうか?』


私は初めて見るそんな幸村殿の姿に立ちすくむことしかできなかった。
主人は赤くなってるであろう私を見て良かったねー、みたいな顔で見ている。


「帰るぞっ」
「あ、はいっ」

結局団子を持ち帰らず、城に帰って私は幸村殿に愛された。
いくら性格が普段と変わろうとも私が幸村殿のことが好きなのは言うまでもなかった。






  


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