もどかしい時間の中で

共に生きていられるならばどれだけ幸せなことか。

名前が嫁いでどれだけの月日が流れたのだろう。
気づけば名前が隣にいることが当たり前になっていた。


『小少将』

そう名前を呼ぶたびに襲う情けなさと後悔。
幾度となく惚れた女の顔を曇らせていた。

永遠など存在しない。
だからこそ、少しのあいだでも時間が許させる限りともにいたい。


共に生きて、
共に老いて、
共に死ぬ。

願いがひとつ叶うとするならば名前の曇りなき笑顔を瞳に捉えながら共に逝きたい。

「名前」
「何ですか、元親様?」

もしも願いが叶うのならばたとえ今一瞬にして命を散らして白骨化しようが悔いはさほどないだろう。

「名前がいるならな」
「はい?」

俺が何を考えているのかわからないままに己の腕に彼女を捉える。
彼女を見れば俺に抱きしめられるのはとうに慣れたというようだった。
しかし、微かに頬が赤く染まっているのがわかる。

苦しい・・・。
愛しくて、苦しい。


自分でも理論づけられそうにもない感情に笑いをこぼしてしまう。

「お前さんをおいてはどこにも行けねえな」


命絶えるときは共に。


世には背徳的な気持ちなのかもしれない。
間違いなく正しい義ではないのだろう。

「なあ名前」

もう一度彼女の名前を呼べば、当たり前だというように笑いかけてくる。
それが無性に愛おしくて”ずっと傍にいさせてくれ”、そう願掛けをするように口付けを落とした。






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間に合いませんでしたが7月22日は元親婦人の命日ということでしたので…
私近衛さんという方の小説を『夏草の賦』を読む前に読んだのですが、そこから元親婦人が可愛すぎて心奪われました
だいぶ私の妄想ではありますが長曾我部(長宗我部)夫婦が好きです(´∀`*)

ちなみに小少将と呼ばせているのは元親の側室の方です
そしてこの元ネタは詩なんですがとても内容がすごいです
去年書いた「自惚れた存在理由」で参考にした詩と同じ詩集だったりします




  


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