無知(まだまだ少女な鶴姫)

館が静まる中、部屋のすみに置いたろうそくの光がゆらゆらと揺れる。
それと同時に揺れる目の前の少女の影を偶に見つめながらため息を零す。

「ああもう姫御前、あなたはまた長曾我部領に行っていたそうですね」
「怒られるようなことはしていません!」
「・・・もう怒られる覚悟はできてるんですか。
 毎度毎度、しかも今回は一人で長曾我部殿に会いに行ったとききます。
 間違いはありませんね?」

顔をそらそうとする姫御前の顔をきっとにらむとバツの悪そうな顔をしてこくりと頷いた。
ここまで素直なら注意を少しぐらい聞いてくれてもいいのにと思うが、ここ数年の付き合いではない。
どうせまた寝たら俺が言っていることなんて忘れるに違いない。
頭で理解したらまたため息が出そうになる。


「素直なことはよろしいですが・・・いいですか、長曾我部殿がいくら良いお人でもあなたは我らにとって大事な方。危険なことばかりされては困ります。
 どうしてそんなに長曾我部殿にこだわるのですか」
「だって海賊さんは―・・・っ」
「長曾我部殿は?」

一瞬にして顔をそむけてしまった姫御前。
・・・よく見たら顔が赤い。
明るいとは言えない室内でもよくわかる状態だ。


「・・・お慕いしているのですか?」
「違うんです、それは。
 でも・・・海賊さん・・・・・・不本意ですが名前さんに似ているんです・・・」
「俺に?」

よく笑い、部下から慕われる土佐の国の国主長曾我部殿と、
正直なところ無愛想で、ただ姫御前の世話とかばっかりしているだけの身分の俺と・・・

「一瞬考えてしまったではありませんか!!」
「きゃーぐりぐりしないでください!
 痛いです、痛いですー」
「はっ、姫御前申し訳ございません、つい昔からの癖で!」

説教となると長年からのくせで手が出てしまうらしい。
といっても最近はこの手は控えていたのだが、無意識に姫御前の頭に手を丸めて当て動かしていた。



「深くは聞かぬようにはしますが、俺の言ったことを忘れないでくださいね?」

姫御前だってそれなりの年齢。
やっぱり戦場で出会ってしまった長曾我部殿のような立派な殿方に想いを抱いてしまうのには無理はないのかもしれない。

「・・・聞いてくれないんですか?」
「へ?」
「聞いてくれたっていいじゃないですか。
 最近名前さんが構ってくれないから・・・」
「俺が、構っていないから・・・?」
「それにずっと”姫御前”とばかり言って”鶴姫”と呼んでくれません」

確かに周りの目を気にするのと、姫御前の年齢を考えてのこと。
それでも、

「鶴姫・・・」
「はい!」


彼女が笑顔で答えてくれるなら少しぐらい忘れてもいいものがあるのかもしれない。

我ながら相変わらず甘いのなんのその。
ただ姫御前の許される時間を考えれば、俺の中ですぐに答えが決まった。




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書きたくなってしまいました←
鶴ちゃんへの愛情があふれてしまいました←
はい、俺得でした





  


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