本気なんだから質が悪い

蝋燭があるとは言えぼんやりと薄暗い部屋の中。
まるで少年のように目を輝かせながら地図を大きく広げ、笑う主と二人きり。


「すげえだろ、この国なんて本当にちっせえんだぜ」


暗い中で小さな文字を読んだり、指さしたりする元親様に困ってしまうけれど。
それと同時に愛しさも感じていた。


「ほら名前ももっと近くで見てみろよ、そんな遠くからじゃ見れねえだろうが!」
「もう・・・元親様、そんなに大きな声上げて皆が起きても知りませぬよ」
「あ、悪い」


興奮気味な元親様との距離を詰め、地図に顔を見やる。
初めて宝だと何か物を持って帰ってきてから毎度思っていたことだけれど。
・・・これが元親様が見る世界。
女中の私なんかが見せてもらえることのありがたさと、すぐ傍にいる相手を想ってはいけないのだという現実への寂しさが入り混じる。


「名前?」
「っ・・・」


つい黙り込んでしまった私の顔を元親様が覗く。
咄嗟のことに驚き、少々息は荒いでしまったけれど、それは気付いてはいないだろう。
そんなことを勝手に思い込みながら内心慌てながら言葉を紡ぐ。


「・・・元親様が日ノ本の外へ出られたときにも私にいろいろな物を見せてくださいますか?」
「今みたいにってことか?」
「・・・・・・望んでいてもいいでしょうか」
「ははっ、そんぐらいのことで何気使ってんだ。
 俺が名前と一緒に見たかったからこうやって見てんだろうが・・・だけどな、ひとつ条件だ」


そう言って元親様がニイと口元に弧を描かせたのが見えた。




『まず俺を望め』




夢なら醒めないで。
願った瞬間に元親様の唇が現だと自覚させるように私の唇を奪う。


元親様の熱を感じる中、感情とは無関係に出た涙に本気の質の悪さを感じた。




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