好きと言わさない恋人たち

「また長曾我部がふっていたようだな」

昼休み一緒に昼食を取っていたかすがの言葉に箸が止まった。

「ついさっきのことだったからな。
 やっぱり付き合えばどの女も浮かれるんだろうな、ったく長曾我部相手になんて馬鹿馬鹿しい。
 それに比べて謙信様はいつだって私に素敵な言葉をくださる・・・謙信様素敵っ、私はいつだって謙信様をお慕いしておりますっ」

いきなりかすがは立ち上がって身をくねらして上杉先生へ愛を紡いだ。
もうこの光景はいつも通りであるので軽く流しながら、ごはんを口に入れる。



それにしても・・・元親。
また別れたんだ。

冷静なフリして私の胸は痛んでいた。

さっきのかすがの、付き合えばどの女の子も浮かれる・・・その言葉。
元親はどうやら誰でも付き合ってといえば付き合っているらしい。
だから結構な人数が元親に告白したらしい。
そして、元親はちゃんと私の言葉を守って女の子達のお願いを何でも聞いていたらしい。
そりゃ誰でも浮かれちゃうわ。
でも誰でも好きだと言ってと言えばふってしまうらしい。
浮かれてしまえばわからないのだろう、そんな別れの理由が待っているだなんて。

しかも今回はひとつ上の先輩が旅立った卒業式の日。
元親は先輩と付き合っていたらしいんだけど、卒業ということでやっぱり浮かれて言ってしまったらしい・・・好きだと言ってと。


昔元親に男に生まれたからには甲斐性を持たなきゃいけない、なんて言ったことがある。
理由は二つ。
幼馴染であり、一番距離が近かったからというのと。
あと元親のことが当時から好きだったのだけれど・・・なんとなく元親が男らしくなる、なんて未来を期待してしまったから。

私のせいだ。

私のせいで、たくさんの女の子を悲しませた。
私のせいで、元親の悪評もとんだりする。

私がなんとかしないと。
将来元親が本気で好きな人ができた時に女癖悪いって思われてしまう。


「でもね、かすが。
 元親だってとってもいい男なんだよ?」
「何言ってる謙信様の方が・・・―って、名前どこへ行く!?」

かすがにひとつ反論してみれば、元親が帰ってくるのが見えた。
ふったあとなのか仲のいい男子たちに囲まれてる。
それでも関係ない。
席を立って、元親のところまで歩いた。


「元親」
「え、名前?」

真正面に立てばちょっと驚いたような顔をする元親。
まあそれはそうだろう。
どんどん変わっていく元親と距離ができたと自覚があったのは私だけではなく、元親も同じなはずだから。
それでも、いくら鬼と言われる男でも驚いた顔すれば昔と同じ。
変わらない元親がそこにいた。



「ずっと前から好きでした、付き合ってください」


何の用で来たのかも元親が自覚しない内にそう告げた。
周りも私と元親が幼馴染だとは知らない人が多いはずだから、私が元親を呼び捨てにする時点で混乱している人のいたみたい。
そんな人たちは余計に驚いた顔をしていた。


この状態で一番驚いている顔は元親だけど。


「名前・・・どういうつもりだ?」
「そのままの意味だけど?
 誰とでも付き合うんじゃなかったの?」
「いや、まあ・・・わかったけど。
 俺でいいのか?」
「元親じゃないとこんなこと言わないわよ、馬鹿じゃないの?
 答えは?」
「わかった」

淡々と言葉を述べるだけの私に元親がついていけていないようで何だか笑いそうになってしまうけれど、これでいい。
せめて高校生活が終わるまで私がキープできれば元親は一途な男だという理想的な立ち位置につくことができる。


「・・・卒業するまで我慢なさいよ」

耳元でポツリとつぶやく私に元親は大して反応はしなかった。
けれど、公開告白をしてしまったからか周りで囃し立てる元親の友達たちのせいで私の言葉はちゃんと元親に届いたのかはわからなかった。






  


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