欲しいのは(へタレ幼馴染な元親)
「ほんと決まり文句になってんなあ」
「うるせえ、黙れよ・・・」
ただいま幼馴染の元親は失恋中。
いつものように私の部屋を駆け込み寺とし、愚痴を溢している。
元親は今までにも何回か失恋を経験している。
それでもふられるときの文句はいつも同じ。
『思ってたのと違う』
『女子力が高いのね』
そんな感じの言葉。
今回もそうだったらしい。
思ってたのと違うと言うのは元親は一見硬派に見えるからだろう。
高い背丈に、がっちりとした体つき。
それで誰も甘いものや可愛いものが好きだとは思わないだろう。
現に今、私の部屋でベッドに寛いでぬいぐるみを抱きしめてチョコをがつがつと食べているところだ。
一体誰が想像するだろう。
「そんなに失恋が嫌なら恋なんてしなかったらいいじゃねえかよ」
「馬鹿、それでも花の女子高生かよ」
「黙れ、こっちはいつまでも元親ちゃんのようにうかれてる訳じゃねえんだよ。
それに誰がこんな性格にしたと思ってる?」
「・・・俺だ」
こんな性格というのは、男口調で恋愛沙汰なんか面倒でできる限り無駄なことはしたくないというようなずぼらな性格のことだ。
元親が小さいころはかよわかったせいで私がよく元親をからかう男子を成敗したりした。
一度正義感を起こしてしまえば、それから先困ってるのを見て見ぬふりをするのは罪悪感が凄いものでいつしか私は元親を守り役ようになっていた。
と言っても今は家族の中でも学校の友達の中でも口調は和らげるようにし、それなりの女子の趣味という者を嗜めるようになった。
「ぶっちゃけ私が変われたらよかったんだろうな、元親の代わりに男に。
どうせ今でも少女漫画やら読んでるんだろ・・・私の部屋から奪って」
「何でそれを・・・っ」
「失恋するたび何で漫画の数が減ってんだろうな・・・。
まあそれはいい、いっそ全部あげてもいいしな」
私も机の傍に会った椅子から、元親のいるベッドに腰を下ろす。
元親が私を見つめる瞳は昔から変わってない。
本当はずっとずっと好きだ、今も想いは変わらない。
だからいつも此処へ来られるたびに複雑に思う気持ちがあった。
「名前?」
「元親が何で悲しまなきゃならんのだろうな、全部全部肩代わりできたらいいのに」
「何言ってんだよ」
「昔守ってやるって何度も言ってたなって思い出していただけだ。
今は大丈夫だろ?」
それでも相談ぐらいになら乗る、そう言って寝転んでいる元親の頭を撫でた。
そうすればいつも通りちょっと照れて元気になって帰る。
そう思った。
なのに今日の元親はどこか違った。
私をじっと見つめたまま、私の腕を引き、同時にぬいぐるみを離した胸板に押さえつけた。
押さえつけたというか・・・抱きしめられてる?
「な、なんだっ!?」
「・・・でだよ、何で、いっつもいっつもいっつもこうやってよ・・・・・・」
「ちょっ、離せ、話聞くから離せ」
「他の女じゃどうせ忘れられねえんだよ・・・やっぱお前さんじゃなきゃ駄目だ、好きだ」
両手で顔を固定され、真正面に言われたのは所謂告白の言葉だった。
「・・・ほんと?」
「俺に冷静に話言わせて、チョコ出して、ぬいぐるみ抱かせてっていう名前のことが好きだ。
だけど俺が欲しいのは失恋を慰める名前じゃなくて、俺しか見れなくて俺を求めて俺に依存するぐらい俺のこと好きになる名前なんだよ」
「元親・・・」
「我儘だってのはわかってる。
俺だっていつまでも餓鬼じゃねえ、だけど」
その瞬間だった。
私たちの唇が重なった。
「もう名前以外の女で名前のこと忘れようとするのは嫌だ」
見つめる瞳は相変わらず同じで。
「私はもう元親を守る気は無い」
「守られる気もねえよ」
「本気ならね?」
私だって元親への想いは今も昔も変わらない。
「あったりめえよ!」
元親の笑った顔をずっと見ていたい。
「わかった、私の場合振る理由が見つからないし・・・大好きよ、元親」
再び目を閉じると唇に温かい何かが触れた。
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元親さんがビ●チ?
そんなことはありませんよ(^ω^≡^ω^)
最近自分の男口調がひどくて書いてみたネタでした笑
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