片想いの時間(先輩な慶次)
私の先輩は風来坊と言われるほど遊び人だ。
出張だと言えば、一人でどこかに行ってしまい酷い時には仕事をほったらかして、ご当地の食べ歩きなどを楽しんでいる。
ぶっちゃけ普段の仕事の時でも行方不明になっちゃたりする人だ。
そして、暇さえあれば女の子たちをくどいていたりする。
世辞だということはわかっていても、色恋沙汰なんかに興味がない私にとっては見てて馬鹿らしくもなってくる。
前田慶次―――――
その人が私の先輩で、私が不本意にも好きになってしまった人だった。
好きになったきっかけは自分でもよくわからない。
正直わかりたくないとも思ってるし、早くふっきれてほしいとも思ってる。
だけど、恋心とは複雑なもので、なかなか引いていってはくれない。
『今日も髪型もいいね』
『可愛い、可愛い』
そんな風に前田先輩はどこの部の女の子にでも言っている。
まあ私だけは言われたことはないけど。
前田先輩の元でいろいろ教えてもらったりで、喋る機会はあっても私だけは何も褒められたことがない。
私にそれだけ魅力がないのか、前田先輩が私のことがただ嫌いとしか思ってないのか。
うわあ、両方だろうな・・・理由はきっと。
そんなこと考えると切なくなってくる。
やっぱり私から行動なんてできる訳がないし、先輩だし・・・自然に終わっちゃうんだろうな。
「前田先輩には・・・いつか本当の気持ち言いたかったって思うのかな」
屋上の手すりに凭れながら、ふうと溜息を吐いてみるとその時後ろから勢いよく扉が開く音が聴こえた。
「前田先輩・・・?」
「名前ちゃん、ここにいたのか」
「え、今昼休みじゃ・・・もしかして私仕事を!?」
何かし忘れていたっけと手帳を確認してみるが残していたことは特にない。
あれ、と混乱していると先輩が笑った。
「大丈夫!
俺の後輩は優秀だからね」
「あっ・・・」
初めて褒められた・・・。
外見とかじゃなかったけど、私にとって初めて褒められたことは大きい。
「どうしたの?」
「な、何もないですっ、別に初めて褒められたとかそういうので嬉しかったとかそういうのはまったくないですから・・・って、ああ!?」
よっぽど私嬉しかったのか、勝手に墓穴を掘っていた。
そんな私を見て先輩は頭をくしゃくしゃと撫でた。
「じゃあさっきの無し!
・・・名前ちゃん真面目だから」
「へ?」
「だって、俺が女の子褒めてたら嫌そうな顔するから」
「・・・・・・ん?」
先輩が他の女の子褒めてたら、まあ嫉妬しちゃうこともあるのかな。
前までは馬鹿だとしか思ってなかったけど。
「名前ちゃんにちゃんと風来坊以外の姿も見せなきゃ、好感度上がってくれないでしょ」
「え、え、え!?」
それって先輩が私を・・・。
「だからもうちょっと待っててくれよ、誰の物にもならないで」
私何夢を見ているんだと思っていても、確かにここは現実の世界で、目の前に先輩がいる。
先輩が私に触れている。
「・・・先輩のポニーテールって素敵ですよね・・・・・・」
「へ?」
私だって風来坊な先輩が嫌いという訳じゃない。
だからそれをアピールしてみるために、試しに先輩のポニーテールを褒めてみたけど、先輩はいきなりどうしたんだという反応をするだけ。
いじけてしまった私はそっぽを向き、そんな私に焦る先輩。
こんな風な関係もいいものなのかなと思った。
だけど、それ以上にこんな人となら傍にいたいと思う。
先輩が私の本当の気持ちに気付いてくれるまでが、私の片想いの時間。
たまにはちらほらと気付いてくれるようアピール頑張ろうと決め、未だに焦る先輩にこっそり笑った。
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初めての慶次ですね。
女の子褒めない慶次とかどんなだよ、とか自分でつっこんでたりします笑
慶ちゃんのポニーテールはむふぁむふぁしてみたいですよね!ね!・・・すいません
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