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「兄さん起きて」
「… … …」
「学校行く前に課題終らせて」
「…オニだろ… おまえ…」
「そうでもないよ」
そういって、布団から出ようとしない燐にちゅっと口づけた。
「もっ やめろっ」
「どうして?昨夜はおやすみも言わないで寝ちゃっただろ。風呂にも入れてやったのに意識朦朧でさ」
「! 寝た!? 違うだろっ」
最後のほうは記憶もおぼろげだが、まだずきずきと疼く下腹部の違和感で、最後まで出させてもらえなかった事実を悟る。
「ちょと…トイレ…いく」
「なにしに?」
すかさず突っ込んで来る雪男に、燐はキレた。
「なにって!!わかってんだろこの鬼畜眼鏡!! 自分が何したかよく思い出してみろっ」
「…兄さん? 朝だからって威勢がいいけど、同じセリフを今夜言えるのかな」
「ぐ……… 言え…ません…」
「そういう学習しないところ、馬鹿でかわいいけど。気をつけてよね。僕も最近、行動の制御に自信がないんだ。
それに、トイレに行っても無駄だと思うよ?」
「は?」
その言葉の意味を咀嚼して、おそるおそるズボンの中を確認した燐が見たものは、違和感の原因…
「リング、つけちゃった」
「お… おまっ… こ…」
「課題を終えること。僕の授業を寝ないで聞くこと。クリアできたら、外してあげるよ。あ、僕の授業は最終時限だから」
「で…きな…かった…ら、、、いや、いやいい聞かない、あえて聞かないから!」
「できなかったときね。…今日は金曜日だから遠慮いらないよね。 まぁ、がんばって」
「雪男…」
「あ、そうだ、兄さん」
着替えながら燐を振り返った雪男は、やわらかく笑ってこう言った。
「僕への誕生日プレゼントは、兄さんがいいよ」
真っ赤になってなにやら喚き立てる燐を、真面目な顔で見詰める。
冗談めかして言ったけれど、雪男の願いはそれだけだった。
毎年、兄さんと二人で誕生日を迎えたい。
些細で、でも当たり前じゃないかもしれない願いを、雪男は見た事もない神様に託し、愛おしい燐の姿を胸いっぱいに呼吸した。
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ゆぎ様
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