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押し倒したそばからがむしゃらに抵抗してくるので、詠唱を使って体力をそぎ落としてやった。こんなことで長年貯め込んだ知識が活かせるとは。嬉しいやら悲しいやらだ。

「ゆ、ゆき、お、お、おちつけ!」
「僕はいつでも冷静だよ。兄さんが生クリームこぼすから・・。」

流石にそのまま床に押し倒すのは気が引けたので、自分より一回り小さい身体を調理台の上に持ち上げる。じたばたと暴れる手足に呪詛を刻んで、完全に自由を奪った。

「ばっか、お前・・ここ厨房!料理作るとこだっての!」
「僕は兄さんが食べたい。」
「変態!むっつり!あほ眼鏡!!」

身体から力が抜けていくせいで、台から滑り落ちそうになる。自然と雪男にしがみつく形になり、互いに密着してしまう。開かれた両足の間に、雪男の固くなった熱を感じ、さらに顔が赤くなった。

「ばか!おま・・、ほんともうやめろって・・っ。」
「兄さん・・。」

吐息がかかるほどの近距離で囁かれ、腰がじくりと熱を持つ。
「今日は誕生日なんだし、多めに見てよ。」
悪戯っ子のように笑う雪男は酷く楽しげで、その笑顔を崩したくなくて何も言えなくなってしまう。火照った顔を両手で蔽い隠し、燐は静かにうなずいた。


下着と一緒にジーンズを脱がし、露になった内股に唇を寄せる。昔から思っていたことなのだが、兄の肌は男にしては随分と白い。よく外に出てはしゃぎ回っていたくせに。自分以外まず目にすることはないだろうとわかっていても、ふつふつと湧き上がるのは黒く渦巻く独占欲。足を大きく開かせて、付け根の部分に吸いつく。
「っ・・!」
燐は身体をびくりと震わせて、じりじりと調理台の上へ逃げようとする。まぁ、そんなことを許すはずもなく、腰を掴んで引き戻してやった。

「こら、逃げるなよ。」
「お、お前が・・、へんなとこ舐めるからっ・・。」

真っ赤になって抗議する燐は、羞恥のあまり視線を合わせようとしない。その仕草が、雪男の中の耆虐心を刺激するというのに。全く、困った兄だ。ボウルの中に残っていた生クリームを無造作に掬い取り、燐の腹の上に垂らす。不快な感触なのだろう、あからさまに身体が強張った。くるくると弧を描くようにクリームを塗りたくっていく。ほんのりと甘い匂いが鼻腔を掠め、自然と身を屈めた。何のためらいもなしく、ぺろりと肌を舐めれば、燐は今にも泣き出しそうな声を上げた。

「っ、あ!な、ばっか・・っ、この、食いもんで、なにやって・・っ!!」
「やっぱり、甘いね。」
ぴちゃぴちゃと臍の窪みに舌を差し込んで唾液を送り込むようにして舐めてやる。
「ぁっ、んっ、や・・めろって・・!」
「やだ。」
またクリームを掬い、今度は後孔に塗りつける。流石の燐もこれには動揺したのか、ばたばたと足をもがかせた。
「やっ、だ、っ!」
「今日は許してくれるって約束だろ・・?」
逆らえない、絶対的な瞳。燐はぼろりと涙を零しながら、唇を噛んだ。


残っていたクリームの三分の二を使い、丹念に後孔を解した。ローションとはまた違った感覚に、燐は終始戸惑い身悶えていた。その姿が普段以上に厭らしく、酷く興奮した。三本目の指を引き抜き、足を方へと担ぐ。猛った自身を宛がい、ゆっくりと体重をかけていく。

「兄さん・・、力、抜いて・・?」
「こ、んな、ばしょで・・ん、ぬける、か・・っ!」

普段使っている柔らかいベッドではなく、堅い調理台の上に乗っているのだ。うまくバランスが取れず雪男にしがみつく。じんわりと額に汗を滲ませて、燐ははっはっと荒い息を吐いた。結合部の隙間から、とろりとした白い液体が伝った。あぁ、まだ出してないのに。エロいな。

「っ、あ、おま・・なん、でっ!」
「ははっ・・、兄さんがエロいからだよ。」

勢いをつけて抜き差しをすれば、燐はたまらないといった表情で押し殺したような悲鳴を上げた。粘ばついた音が鼓膜を刺激する。ぐちゅぐちゅと泡立った液体がたらりと滴って・・、厭らしかった。

結局、あれから一緒にお風呂に入ってケーキを作りなおすことになった。当然のことだが、燐の機嫌はこれ以上ないほど悪く、ろくに口もきいてくれなかった。しかし、ちゃんと作りなおしてくれる辺り、律儀で可愛いと思ってしまうわけで。雪男は黙々と料理に没頭する燐を眺めながら、厨房の壁に寄り掛かった。

「おい、むっつり鬼畜ドエロ眼鏡!」
「・・・、なんか酷いな。」
「・・・・、また変なことしたら、ケーキ抜きだかんな!」
「はいはい、わかってるよ、兄さん。」
「ばぁーか・・。」
「うん。ごめんね?」
「・・・、ばか。」
「うん。」
「・・・、ゆ、きお。」
「ん・・?」
「・・、誕生日、おめでとう。」
「ありがとう。兄さんも、おめでとう。生まれてきてくれて、ありがとう。」
「・・・、ばぁか。」

真っ赤になって項垂れる燐が可愛くて、気づけば力いっぱい抱きしめていた。


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HP→/鶉の卵様

nove


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