2

「あー・・・まぁ、ええんちゃう?俺の家なんて家族多いから、『おめでとー』って言って終わりやで?誕生日会なんてしてもろたことないわぁ。羨ましいわ〜。奥村くん、来年の誕生日に俺に何か作ってや」
「あ、わり、スーパーの特売の時間だから俺行くわ」
「ぞぇえぇぇ!このタイミングでソレかいっ」
「わりぃな。じゃ、またなー」

颯爽と尻尾を揺らして教室を出て行く悪魔を皆が目で追ってしまった。
慌てて出て行ったのも、きっと激務の弟の為なのだろう。
何処までも甲斐甲斐しい少年だ。
自分たちも各自帰路に就こうばらけ始めた時だった。

「そうだ!二人の誕生日会をしよう!!」

しえみが宣言するかのように言った。

「あんた、またそんな事言って、この間塾生の誕生会したばっかりじゃない」

出雲が呆れたように言うと、しえみが慌てた様に訂正した。

「そうだけど、側であの二人を祝ってあげれるのって私たちしかいないんだよ?」
「でもそれ、若先生が任務でおらんくなったら、おじゃんやで?」
「あー・・・そっか」
「面白そうじゃん!それ私ものった」

燐が消えた場所から聞き覚えのある女性の声がして振り返った。
冬だというのに、夏場と変わらない露出度が高い服装をしたその塾講師は、ツカツカと歩きながら続けた。

「クソ真面目なあいつに、息抜きが必要だと思っていたところなんだよ。誕生日会は私の授業の時間を使えばいいし、特別講師として雪男を呼べば雪男抜きの誕生会にはならないだろ?」
「ちょっと待って下さい、授業を潰すってことですか?」
「祓魔師にはチームワークが大切なんだよ。親睦も大切な授業です。勝呂くん」

折角の盛り上がりに水を差すなと笑顔で対応するシュラに、『絶対自分が楽しみたいだけだ』としえみ以外は心の中で突っ込んでいた。

「まぁ、前回は『塾生』の誕生会であって、奥村先生はゲストだったし、いいんじゃない?先生にはいつもお世話になってるし」

授業時間で行うことには出雲も眉を潜めたけど、結局出雲のこの発言と、シュラの一声で、宝を含め全ての塾生の同意を得れた。

「ほんなら、前回の応用で、志摩と神木は朴さんと一緒にプレゼント兼買出し係。子猫丸は、一人で大変やろうけどケーキ担当なっ。ほんで、俺と杜山さんと宝は、装飾係。霧隠先生の授業前になったら直ぐに装飾できるようにしなあかんで。霧隠先生は、絶対奥村先生を連れて来て下さいよ」

何時ぞやのサプライズ誕生日会の様に勝呂が仕切り、士気を高め合って解散した。

「待って下さい。兄さんに剣を抜かすってなんですかっ!?」
「その言葉の意味通りだよ、ビビリ。だから、お前も万が一に備えて来いって言ってるんだよ」

誰もいない暗く長い廊下に、二人の靴音と声が響く。

「意味が分かりません。一体兄に何をさせる気ですか?!」
「何をさせるか、ついてこれば分かる」
「説明になっていませんよ、シュラさん」

今にでも掴み掛かろうとする勢いの雪男から、絶妙に距離を取ってそれをかわす。

「いいから黙ってついて来いって」

上司に逆らう事は出来ず、ぐっと奥歯を噛み締め、シュラの後ろを黙って付いて行った。

「おっくむらく〜ん、一緒にトイレ行ってくれへんかな〜?」
「はっ、なんで?」

明らかに何かを企んでいるとしか思えないような猫声で連れションをお願いする志摩に、燐は何も感じないないのかごく普通に問い返した。

「さっきトイレ行こうと思ったんよ。でもほら、アレがいてはってな・・・まだおったらそれこそ失禁してまうし、一緒におってくれへん?」
「どうせ蜘蛛かゴキブリがおっただけなんやろ?ったくしょうのないヤツやな」
「坊!そない露骨に言わんでもええですやろっ」

想像したのか、若干涙目になりながら起こる志摩に、燐はまたかとため息をついた。

「それなら、俺じゃなくて子猫丸でもいいじゃねぇか」
「あかん。坊と子猫さんは絶対付いて来てくれへん。もう、奥村くんしかおらへんねん。この通りや!」

手のひらを合わせて頭上に置き頭を深々と下げる志摩に、いつもなら志摩の病気では動かない燐だが、次のシュラの授業が控えてる為、仕様がない奴だなと言って付いて行ってやることにした。

志摩と燐が教室から出たのを見計らって、教室にいた塾生(宝は相変わらず不動だったが)無言で目配せしながら、打ち合わせどおり自分の担当の飾り付けを始めた。
まずは子猫丸としえみが、中央の机二つをくっつけると、勝呂がその机に用意していた赤い布をばさっと被せ、安全ピンで布に留めるだけにしておいたリボンやクマなどの飾りをバランスよく留めた。


next


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -