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雪男は何食わぬ顔で、志摩に告げる。皆にバレてしまったのも全て雪男のせいであるにも関わらず、平然としている。むしろ、全身からフローラルな香りでも漂ってきそうなほど、嬉しそうだった。

「そうですかぁ。まあ、クリスマスパーティーっても、夜には解散しますしね。奥村センセのその計画も、十分実行出来ますよ。俺も二人を祝福します」
「ありがとうございます、志摩くん。結婚式にはぜひ参列して下さいね」
「だーかーら!俺は別に……」

視線の先を志摩に向けようとして、勝呂と目が合った。明らかに人を突き放したような目をしていて、さらに勝呂のそばにはいつの間にか出雲が立っている。そして、普段は犬猿の仲である二人が珍しく声を揃えた。
『お幸せに』
そのセリフとは裏腹な、二人の表情。どこか冷めたような視線をこっちに向けていた。

「ほな、神木。クリスマスパーティーの計画でも練るか」
「そうね。バカ二人は置いといて」
「ああ、すみません。バカップルで」

何故か照れたような顔をして、謝る雪男。

「いや、褒めてねえよ!?」
「ああ、ええですよ。若センセたちは当日参加だけで。準備は俺達でやりますから、気のすむままにイチャコラしとって下さい」
「何でだよ!?俺も手伝うって……」

無理矢理俺の顔を自分の方に向けると、雪男は真剣そうな顔つきで言った。

「兄さん。ああ言ってくれている事だし、僕たちも準備をしようよ」
「……一体、何の準備だよ?」
「もちろん、僕たちの未来に向けての準備だよ。マイホーム貯金はすでに少しずつ貯めているから……。ちょっと早いような気もするけど、すぐに出来る訳じゃないし、今から始めてもいいと思うんだ」
「……だから何をだよ?」

雪男はそれ以上何も言わず、爽やかな微笑みを浮かべた。
その微笑みを見た瞬間、何だか嫌な予感がしたけれど、すぐにその予感が的中してしまった事に気づく。

「――最初はどっちがいい?男の子?女の子?」

雪男は俺が逃げられぬよう、背後から俺の両腕を拘束し、そのまま引きずるようにして、教室のドアへと向かっていた。俺は誰かに助けを求めるべく、ざっと教室を見渡したけれど、誰も助けてくれそうにない。勝呂と神木に至っては、目を合わせようともしなかった。

「大丈夫、安心して!兄さん。優しくしてあげるからっ」

拝啓
天国の父さんへ
俺はどうやら弟に、犯されそうです。


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HP→Bonne*honey/せり様

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