うつくしくもない病



※学生


僕の友達になまえちゃんというすっげーきれいな女の子がいる。
美人じゃないけどたからものみたいにきれいでやさしい子。二年生になってからクラスは変わっちゃったけど、僕は今でもよくなまえちゃんの家に遊びに行く。


今日も遊びに行った。ドアをノックしても返事がないので、ああ今日もだな〜と思いながら勝手に上がってドアを開ける。
ドアの向こうでやっぱりなまえちゃんは泣いていた。なまえちゃんの手首は今日も真っ赤に濡れていた。
なまえちゃんは今日もとってもくるしんでいる。少し前からこうなんだけど、ひょっとしたらもっと前からこうだったのかもしれない。僕が知らなかっただけで。
だけど知ってからだって大して変わらない。なまえちゃんのくるしみは今日も僕にはわからない。


なまえちゃんは大人になりたくないんだって。胸がふくらむのも、背が伸びることも、髪が伸びることだって嫌がってる。
それがなくちゃもう人形だよねーっておもうけど、そう言ったらなまえちゃんは人形になりたいって言い始めた。なまえちゃんが笑わなくなったらいやだから、僕はそれいやだな。
だけど僕がいやだろうとなまえちゃんにとってはそんなの全然よくて、大人になるよりずっとマシで、ただとにかくなによりも成長しちゃう自分のことを嫌って嫌って毎日自分を責め続ける。なまえちゃんは別になにもわるくないのに。
 でかくなっちゃうのはなまえちゃんのせいじゃないんだよって言うとなまえちゃんは泣いた。そうして、十四松くんはきれいだねってだいじそうにぎゅっとしてくれた。
十四松くんは、十四松くんだけはずっときれいだね、うつくしいねって、なまえちゃんはとってもやさしい声でいう。
そんな時、僕は布団の中とかぬるいお湯につかってる気分になった。きもちいい。そのまま寝てしまえそうなくらい心地がいい。
そんな思いをしているのが僕だけってことも、すっげー嬉しいし、だからこのやりとりは僕となまえちゃんだけのひみつのことにしてる。


なまえちゃんは男の子が嫌い。それなのに男の僕のことを抱きしめたのは、なまえちゃんが僕のことをきれいだと思っているかららしい。 反対になまえちゃんはおそ松兄さんのことなんてもううんと苦手。セックスとか言うからだって。おんなじ六つ子なのに、たったそれだけの違いでおそ松兄さんはきらわれてるから、僕だってうっかりしたら嫌われちゃうのかな。
 だから僕はセク口スとか言ってしまわないようにめちゃくちゃ気をつける。なまえちゃんに嫌われたくないからぼくは言わない。それにもしうっかり言ってしまえば、なまえちゃんは死にそうな顔をするから。
だから正直なまえちゃんとセク口スしたいけど、絶対絶対言わない。でも、したい。でも言えない。ぼくも毎日くるしい。どうしたら二人で幸せになれるかなぁ。


考えたけどぜんぜんわからなかった。
この前僕が考えていたら、おそ松兄さんはなまえちゃんのことをめんどくせー!めんどくせー!って2回言って、もういっそ襲ったれ!ずっとそうしてても意味ないから!とか言ってきたっけ。
近くにいたトド松も頷きながら、そんなこと言いながらちゃっかり誰かとしたりするんだよそういう子は、だからしたいならうまいことその子のそういう対象になんとか、とか言ってた。
その先何を言っていたかはあんまりおぼえてないけどトド松もきらわれるだろーなーと僕は思った。今こうして思い出してもきらいそーだなぁと思う。


トド松のことをなまえちゃんがどう思うかはなまえちゃん次第だからわかんないけど、なまえちゃんはおそ松兄さんが嫌いだから兄さんのいうようにしたらたちまち僕まで嫌われるだろう。やっぱそれだけはいやだ。
だからそれはできない。できないんだけど。でもね、僕はおそ松兄さんの言っていることが間違いだとは思っていない。なまえちゃんはおこるかもしれないけど、がっかりするかもしれないけど、泣くかもしんないけど。

それでも、いくらなまえちゃんが嫌がってもなまえちゃんも僕ももうほとんど子どもじゃないから。せんせーはよく子どもだとも大人だともいうけど、子どものおわりだからそう言われるんだなって考えておもった。
僕たちはもうおしまいなんだ。なまえちゃんもそれをちゃんとわかってる。17歳の誕生日にそれに気づいて、だからなまえちゃんはそれから毎日泣いたし、しにたいと思ったんだとおもう。
なまえちゃんがどうしてそんなに大人になりたくないのかは今日もわかんなかったけど、わかる気もするし、でもね、だからってそんなに苦しまなくていいと思うんだよ。
なまえちゃんも僕も大人にならなきゃ。なまえちゃんがそれをゆるす日がいつくるかもわからないけど、そうなったら二人で幸せになれそうだ。


だから明日は。明日こそは泣いているなまえちゃんの手を握って、デートに誘おうと思う。
トド松に教えてもらったカフェでお茶して、買い物して、やきゅうして、それから最後になまえちゃんの両の手を取って すきだっていうんだ。
何回も何回もそうして、ちょっとずつ触って、いつかなまえちゃんが抱きしめてって言ってくれたらいいな。なまえちゃんにたくさんふれても許されるようになりたいよ。
僕はね、会ったばっかりの時からなまえちゃんのことが大好きだから。
なまえちゃんが大人になったって、きっときっとずっと大好きだから。なまえちゃんが死んじゃうのは嫌なんだ。生きてまた笑って欲しいんだ。
むかしのなまえちゃんもすんげーかわいいけどね、未来のなまえちゃんはきっともっとすてきだよ。かなしいことなんて何もないから、だからおねがい泣かないで。殺さないで。


泣いているなまえちゃんの隣にだまって座ったまま、僕はそんなことを考えた。
なまえちゃんは今なにかんがえてんのかなぁ、隣にいる僕のこと少しでも見えてるかな。
考え過ぎで頭がくらくらしてきた。向いてないことはあんまりするもんじゃないね。
それでもなまえちゃんのためにいっぱい考える時間が僕はきらいじゃない。


君の見つめる絶望はぼくの希望だ
151207
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