小宇宙 | ナノ
それぞれのこと

寒空の帰り道。おそ松は、隣を歩いている一松をチラチラと見ながら、内心で困ったものだと頭をかいていた。
おそ松は一松と(ついでに十四松とも)、始業式の日以来いつもこうして一緒に帰っていて、もう8回はそうした記憶がある。つまりこの四男は、もう8回も部活に行っていないのだ。それの何が困ったって、こいつはどうせあの漫画本が原因だというのだろう。



「なぁ一松、ごめんって」

「なんであやまんの」

「…いや、何でもないけど」



いやいや、何でもなくはない。一松が何でもないことにしたそうだから、珍しく気を遣ってやっただけなのだ。おそ松は本来ならばこんな風に顔色を伺うことはしたくなかったが(何てったって兄弟だよ?兄弟で何でこんな気遣わなきゃなんないの?)、ほんの数ミリ、自分のせいだという自覚と、悪いことしたなという気持ちがあったので、仕方なく精一杯の気をつかっていた。

ああ、それにしても、図りきれなかった。
────正直そこまで、夜代さんのことすきだったなんてなぁ。



「なんか勘違いしてるみたいだけど、違うから」



ケッと言って視線を反らし、そのまま道端の猫に気を取られている一松に、おそ松は頑張ってため息を止めようとして結局吐いた。
漫画を見つかってしまった時から彼としては随分頑張ったつもりだが、そろそろ気を遣うのにも疲れていた。

今回の件ではっきりしたが、一松は、きっと夜代のことが大好きなのだろうとおそ松は思う。恋でなくとも、友人として。先輩後輩として。一松は、本人が思っている以上に夜代のことが大切だ。
そしてその気持ちは夜代も同じに決まっている。そんなの見ればわかるというのに、このひねくれた四男には悪い方にしか考えられず、この有様。
要するに、これはおそ松にとってはちょっぴり重たいリア充の痴話喧嘩のようなもので、彼はそんなのに付き合わされるのは御免なのだ。

頭の後ろで腕を組み、面倒くさそうに歩くおそ松。それとは対象的に、一松の少し後ろを歩く十四松は、とても心配そうな顔をしていた。
せっかく兄に出来た友人なのに、と思っているんだろう。優しい奴。可愛い弟だ。
おそ松はふと、そんな十四松を見て、8日目にしてもう一つの大きな違和感に気がついた。



「ところで十四松、お前は部活は?」

「え?部活?何が!?」

「え?……あー、ごめん、何でもない」



みんな色々あんだね。
おそ松は再び頭をかいた。

160716
prev next
BACK
TOP
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -