器用な代理人
突然だが、一松は毎日部活に来ているわけじゃない。それなりに来ているけれど、来ない日も結構ある。元々毎日活動するような部活じゃなかったし、私が居座ってるだけなので全く問題ないんだけど、まぁ、来る日の方が楽しいし、来ない日はやっぱりちょっとさみしかった。
ただ、最近は状況が少しだけ違った。
「また来たのかきみは…」
「いーじゃん、夜代さんどうせ暇でしょー?」
「否定はしないけど肯定もしない」
「どっちでもいいや。いやー、一松の借りてきた漫画が面白くて」
隅の椅子にだらしなく座ってだらだら漫画を読んでいるのは、一松にそっくりだけど少し違う、松野おそ松くん。
最近、一松の来ない日には彼がふらりとやって来てだらだらと居座っている。どうやら一松が前に持ち帰った漫画の続きが読みたかったらしい。
別にそれは構わないけれど、絶対に一松のいない日に、しかも私より先に来ている日があるというところが私にはとても不思議だった。
その上、一松には内緒で来ていると言っていた。一体どうやって。
「ねぇおそ松くん、一松って来ない日を決めてたりしてるの?」
「いんや?気分じゃないかな〜」
気分、か。私もそう思っていた。規則性は確かになく、何曜日でも来るし何曜日でも来ない。だけどこうやって行動を読んでいる人もいるとそれは疑わしかった。
正直知りたい。そしたらこの前みたいに寝てるところを見られる事もないのに…実は結構恥ずかしかったんだぞ。
「じゃあどうして君は絶対毎回一松のいない日に来れるの?」
私が聞けば、おそ松くんは漫画から目を離さないまま、足をゆらゆらさせて適当に、あっさり答えた。
「ん〜そこはほら、六つ子的な?」
────そう言われてしまうと、もうそれ以上のものはないよなぁ。
「……なるほど」
世にも珍しい六つ子なのだから、見えない糸か何かで繋がってるんだろう。
漫画の世界から終始離れないおそ松くんがゲラゲラ大声で笑う横で、私は一人納得した。
「ところでおそ松くん、そんなに此処にいたいなら部活入る?」
「俺星とかこれっぽっちも興味ないからいいよー、めんどくさいし。んなことより夜代さんおれお菓子欲しい」
このやろう。
甘え上手というか、付き合い上手で、全く羨ましいものだ。
160404
prev next
BACK
TOP