04

リアがドラコに虐められるようになったのは、クリスマス休暇の前のことだ。
次の授業のために教室を移動しているとき、すれ違った男の子がペンを落としたことにリアは気がついてしまった。
しばらく立ち止まってじっとペンを見ていたが、結局拾って振り返る。少し離れたところで本人もないことに気がついたのか、振り返ってこちらを見ていた。
視線が一瞬緑のネクタイに走って、少年もその隣の彼の友人であろう少年───いや、彼のことは知っている。ハリー・ポッターだ────そしてそのとなりにいる少女も、三人揃って眉を寄せた。
リアも彼らのネクタイを見て赤色だと認識してから、彼らが警戒しているのだと気づいた。
赤と緑は、基本的に敵対している。



「…それ!!僕の「こっこれ!」

「…!?」

「ごめ、ん、…勝手に、つい拾っちゃったの」



押し付けるようにして赤毛の少年にペンを渡す。そこでやっと赤毛をよく見て、あ、双子の。と気がついた。それからふと三人の顔を見ると、拍子抜けしたような顔をしていた。



「…授業、はじまっちゃうよ」

「!あ、ありがとう」



ハリー・ポッターは少しだけ笑ってそう言った。赤毛の少年はなんにも言わなかったけれど、リアは素直にハリーのお礼が嬉しかった。嬉しくてつい、ふふ、と笑った。それをみた少女も笑ってくれて、手を振って別れた。

リアはいい事をしたな、なんて素敵な気持ちで、その場を離れようとしたのだった。しかし、その刹那呼び止められて、足はぴたりと地面に縫い付けられたみたいになった。



「びびり屋泣き虫のミス・グレイだ」

「………」



声の方に目を向ける。そこにいたのは、少し前にちょっとした嫌味を言ってきた新入生の男の子だった。リアはよく覚えていた。
自分を悪く言ったり、避けたりした人のことを、リアは忘れたことはない。忘れられなかった。────最も、彼を忘れられない一番の理由は他にあったけれど。
声を聞いただけで、身体はぴたりと動かなくなった。



「この前3年生の先輩方が言っていたよ。あの馬鹿なグリフィンドールの奴らと、穢れた血にまで親切にしてやってるお人好しで意見の言えないびびり屋、変わり者だって」

「け、穢れた…!?」

「なにか言いたいことでも?」

「あ………べつに、」



親に言ってはいけないと言われてきた言葉を平然と吐き捨てたプラチナブロンドの少年に思わず声をあげたが、慌てて眉を下げて目をそらす。そんなリアの態度を、ドラコ・マルフォイは鼻で笑った。



「ちょっと、流石にその態度はないんじゃない?グレイは先輩なのよ」



近くにいたグリフィンドール生が見かねたのか間を割って入ってくれた。話したことはなかったが、リアの事を知っていてくれたのだろう。
そこでようやく身体が動いた。このままでは喧嘩になってしまう、目をつけられても面倒だし、このやさしいグリフィンドールの女の子に迷惑がかかるのもよくない。
そう考えたリアは慌てて、睨むようにドラコを見るグリフィンドール生を、いいの、いいの。大丈夫。と言ってなだめた。
ドラコはそんなリアの様子に調子づいたのか、ますます笑みを深めた。



「ふん。本当に何も言えないんだな。弱虫は本当みたいだ。スリザリンには素晴らしい先輩がたくさんいるが、君はちがうようだね」

「…じゃあ、もう私行くから」



ありがとうとグリフィンドールの女の子にお礼を言って、リアは逃げるようにその場を立ち去った。

やたらめったらつっかかられるようになったのはその日からだった。


160205
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