02

「今日も見事に情けない顔をしているな、リア・グレイ。スリザリンの恥さらし」



ドラコはいつも、リアにそんなことを言う。

リア・グレイはいじめられっ子だ。
誰かに話しかけても避けられたり、すれ違うときに笑われたり、こうして出会う度にいびられたりしている。
それはホグワーツの生徒の間では、そういう奴がいるとそれなりに噂になるような話だった。

スリザリン生が誰かにちょっかいを出すなんて別段珍しいことではない。ただ虐められているだけなら誰もが知る噂になるには些か効力がたりないだろう。
だが、彼女はほんの少し特殊だった。彼女はちょっかいを出しているドラコよりも2つも年上の魔女で、3年生だったのだ。おまけに彼と同じスリザリン生である。
そして、ドラコの他に彼女を避けたり笑ったりするのも、同様にスリザリン生達だった。
いつも結束の硬い緑色が同じ緑色をからかい、避け、嘲笑するのは中々珍しい光景で目を引く。
だからリアは、笑うスリザリン生と、珍しいものを見るような目で見てくる他寮生の目にいつも小さく縮みこまっていなければならなかった。
そんな風になるべく隅っこで過ごしているリアに追い討ちをかけるように、ドラコはリアをこう呼んだりする────ラット。所謂ドブネズミだ。

楽しい楽しいイースター休暇が終わってから一週間程しか経っておらず、げんなりするにはまだ早いようにも思えたが、この一週間もそのような状態が続きリアは既にげんなりするしかなかった。
去年の今頃も同じようにげんなりとしていたが今年ほどではない。
何故なんて聞くまでもなく──去年までは、いじめの主犯であるドラコがいなかったから。

去年までも、決して友達が多かった訳では無かった。それでもルームメイトと朝の挨拶を交わすくらいはしていたし、こうして真っ向から虐められることはなかったのだ────基本的に、一人ではあったけれど。
ドラコ・マルフォイという存在は、リアにとって勿論直接的な害もあったが、それだけではない。今までリアと朝の挨拶を交わしていたルームメイトも、陰気くさい裏切り者と陰口をたたいていただけのスリザリンの生徒も、
リアにちょっかいをかけるドラコをよく褒め、彼を見習うようにリアを笑ったり聞こえるように悪口を言うようになった。リアがからかわれる様子が面白くて仕方ないらしい。
ドラコのせいで今まで大人しくしていた者達にまで火がついたのだ。褒められた彼も得意げで、彼がいじめに飽きない理由にはそれも含まれていそうだった。

追い詰めて、震えるリアがとうとうなんにも言えなくなったら楽しそうに笑って去っていく。今日もドラコの後ろ姿を見ながら、リアは泣き出しそうになるのをぐっと我慢した。
出来るだけドラコに会いたくはなかったけれど、会わない日なんて同じ寮である限りあるわけないし、そんな日を七回も繰り返したらぐったりもするに決まってるし、泣きたくなっても仕方ないと言いたい。
リアは誰にも見つからないように、涙の代わりにため息にも似た息を吐いた。ため息なんか見つかったらまた、なにか言われるもの。辛気臭いとかなんとか、ね。
そう思うとリアはまたひどく憂鬱な気持ちになった。


160202
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